工場におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準(案)

エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号。以下「法」という。)第4条第1項の規定に基づき、工場におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準を次のように定め、平成11年4月1日から適用する。
なお、平成5年7月29日通商産業省告示第388号(工場におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準を定めた件)は、廃止する。

Tエネルギーの使用の合理化の基準

IIエネルギーの使用の合理化の目標及び計画的に取り組むべき措置

事業者は、上記Tに掲げる諸基準を遵守するとともに、エネルギー消費原単位(エネルギーの使用の合理化に関する法律施行令(昭和54年9月政令第267号)第1条の2で定める業種にあっては生産のために要したエネルギーの使用量を生産数量で除して得た値をいい、その他の業種にあっては業務のために要したエネルギーの使用量を当該業務に供した施設の規模等エネルギーの使用量と密接な関係をもつ値で除して得た値をいう。)を工場又は事業者ごとに中長期的にみて年平均1パーセント以上低減させることを目標として技術的かつ経済的に可能な範囲内で次に掲げる諸目標及び措置の実現に努めるものとする。
また、事業者は、将来に向けて、これらの措置を最大限より効果的に講じていくことを目指して、中長期的視点に立った計画的な取組に努めなければならないものとする。

1.エネルギー消費設備等に関する事項
(1) 燃焼設備
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1]燃焼設備については、別表第1(B)の空気比の値を目標として空気比を低下させるよう努めること。
2]空気比の管理標準に従い空気比を管理できるようにするため、燃焼制御装置を設けるよう検討すること。
3]バーナー等の燃焼機器は、燃焼設備及び燃料の種類に適合し、かつ、負荷及び燃焼状態の変動に応じて燃料の供給量及び空気比を調整できるものとするよう検討すること。また、バーナーの更新・新設に当たっては、リジェネレイティブバーナー等熱交換器と一体となったバーナーを採用することにより熱効率を向上させることができるときは、これらの採用を検討すること。
4]通風装置は、通風量及び燃焼室内の圧力を調整できるものとするよう検討すること。
5]燃焼設備ごとに、燃料の供給量、燃焼に伴う排ガス温度、排ガス中の残存酸素量その他の燃料の燃焼状態の把握及び改善に必要な事項について、計測機器を設置し、コンピュータを使用すること等により的確な燃焼管理を行うことを検討すること。

(2) 熱利用設備戻る
1]冷却器及び凝縮器への入口温度については、200℃未満に下げることを目標として効率的な熱回収に努めること。ただし、固体又は汚れの著しい流体若しくは著しく腐食性のある流体及び冷却熱量が毎時2,100メガジュール未満又は熱回収可能量が毎時630メガジュール未満のものについては、この限りではない。
2]加熱等を行う設備で用いる蒸気であって、乾き度を高めることによりエネルギーの使用の合理化が図れる場合にあっては、輸送段階での放熱防止及びスチームセパレーターの導入により熱利用設備での乾き度を高めることを検討すること。
3]工業炉の炉壁面等は、その性状及び形状を改善することにより、放射率を向上させるよう検討すること。
4]加熱等を行う設備の伝熱面は、その性状及び形状を改善することにより、熱伝達率を向上させるよう検討すること。
5]加熱等を行う設備の熱交換に係る部分には、熱伝導率の高い材料を用いるよう検討すること。
6]工業炉の炉体、架台及び冶具、被加熱物を搬入するための台車等は、熱容量を低減させるよう検討すること。
7]直火バーナー、液中燃焼等により被加熱物を直接加熱することが可能な場合には、直接加熱するよう検討すること。
8]多重効用缶を用い加熱等を行う場合には、効用段数の増加により総合的な熱効率が向上するよう検討すること。
9]蒸留塔に関しては、運転圧力の適正化、段数の多段化等による還流比の低減、蒸気の再圧縮、多重効用化等について検討すること。
10]熱交換器の増設及び配列の適正化により総合的な熱効率を向上させるよう検討すること。
11]高温で使用する工業炉と低温で使用する工業炉の組合せ等により、熱を多段階に利用して、総合的な熱効率を向上させるよう検討すること。
12]加熱等を行う設備の制御方法の改善により、熱の有効利用を図るよう努めること。
13]加熱等の反復を必要とする工程は、連続化若しくは統合化又は短縮若しくは一部の省略を行うよう検討すること。
14]工業炉の炉壁外面温度の値を、別表第2(B)に掲げる炉壁外面温度の値(間欠式操業炉又は1日の操業時間が12時間を超えない工業炉のうち、炉内温度が500℃以上のもにあっては、別表第2(B)に掲げる炉壁外面温度の値又は炉壁内面の面積の80パーセント以上の部分をかさ密度の加重平均値0.75以下の断熱物質によって構成すること。)を目標として炉壁の断熱性を向上させるよう努めること。
15]断熱材の厚さの増加、熱伝導率の低い断熱材の利用、断熱の二重化等により、熱利用設備の断熱性を向上させるよう検討すること。
16]熱利用設備の開口部については、開口部の縮小又は密閉、二重扉の取付け、内部からの空気流等による遮断等により、放散及び空気の流出入による熱の損失を防止するよう検討すること。
17]熱利用設備の回転部分、継手部分等には、シールを行う等熱媒体の漏えいを防止するための措置を講ずるよう検討すること。
18]熱媒体を輸送する配管の径路の合理化により、放熱面積を低減するよう検討すること。
19]開放型の蒸気使用設備、開放型の高温物質の搬送設備等には、おおいを設けることにより、放散又は熱媒体の拡散による熱の損失を低減するよう検討すること。ただし、搬送しながら空冷する必要がある場合はこの限りでない。
20]排ガスの廃熱の回収利用については、別表第3(B)に掲げる廃ガス温度及び廃熱回収率の値を目標として廃ガス温度を低下させ廃熱回収率を高めるよう努めること。
被加熱材の水分の事前除去、予熱、予備粉砕等、事前処理によりエネルギーの使用の合理化が図れる場合は、予備処理の方法を調査検討すること。
ボイラー、冷凍機等の熱利用設備を設置する場合において、小型化し分散配置すること又は蓄熱設備を設けることによりエネルギーの使用の合理化が図れるときは、その方法を検討すること。
ボイラー、工業炉、蒸気
温水等の熱媒体を用いる加熱設備及び乾燥設備等の設置に当たっては、使用する温度レベル等を勘案し熱効率の高い設備を採用するとともに、その特性、種類を勘案し、設備の運転特性及び稼働状況に応じて、所要能力に見合った容量のものを検討すること。
温水媒体による加熱設備にあっては、真空蒸気媒体による加熱についても検討すること。

(3) 廃熱回収装置戻る
1]廃熱を排出する設備から廃熱回収設備に廃熱を輸送する煙道、管等には、空気の進入の防止、断熱の強化その他の廃熱の温度を高く維持するための措置を講ずるよう検討すること。
2]廃熱回収設備は、廃熱回収率を高めるため、伝熱面の性状及び形状の改善、伝熱面積の増加等の措置を講ずるよう検討すること。また、蓄熱設備の設置により、廃熱利用が可能となる場合には、蓄熱設備の設置についても検討すること。
3]廃熱の排出の状況に応じ、その有効利用の方法を調査検討すること。
4]加熱された固体又は流体が有する顕熱、潜熱、圧力、可燃性成分及び反応熱等はその排出の状況に応じ、その有効利用の方法を検討すること。

(4) コージェネレーション設備戻る
1]蒸気又は温水需要が大きい場合には、コージェネレーション設備の設置を検討すること。
2]コージェネレーション設備に使用する抽気タービン又は背圧タービンについて、抽気条件又は背圧条件の変更により効率向上が可能な場合には、抽気タービン又は背圧タービンの改造を検討すること。

(5) 電気使用設備戻る
1]電動機は、高効率のものを採用するよう検討することとし、全閉形電動機のうち出力0.2〜37キロワットで高効率のものを採用する場合にあっては、別表第5に掲げる効率以上のものを目標として検討すること。
2]電動力応用設備を負荷変動の大きい状態で使用するときは、負荷に応じた運転制御を行うことができるようにするため、回転数制御装置等を設置するよう検討すること。
3]電動機はその特性、種類を勘案し、負荷機械の運転特性及び稼働状況に応じて所要出力に見合った容量のものを配置するよう検討すること。
4]受電端における力率を95パーセント以上とすることを目標として、別表第4に掲げる設備(同表に掲げる容量以下のものを除く。)又は変電設備における力率を進相コンデンサの設置等により向上させるよう検討すること。
5]電気使用設備ごとに、電気の使用量、電気の変換により得られた動力、熱等の状態、当該動力、熱等の利用過程で生じる排ガスの温度その他電気使用設備に係る電気の使用状態を把握し、コンピュータを使用する等により的確な計測管理を行うことを検討すること。
6]電気加熱設備は、燃料の燃焼による加熱、蒸気等による加熱と電気による加熱の特徴を比較勘案して導入すること。さらに電気加熱設備の導入に際しては、温度レベルにより適切な加熱方式を採用するよう検討すること。
7]エアーコンプレッサーを設置する場合において、小型化し、分散配置することによりエネルギーの使用の合理化が図れるときは、その方法を検討すること。

(6) 空気調和設備、給湯設備等戻る
1]空気調和設備に関しては、次に掲げる措置、建築物判断基準(建築物の外壁、窓等を通じての熱の損失の防止に関する事項及び空気調和設備に係るエネルギーの効率的利用に関する事項に限る。)を踏まえた措置等による空気調和設備のエネルギーの効率的利用の実施について検討すること。
1)空気調和設備には、効率の高い熱源設備を使った蓄熱式ヒートポンプシステム、ガス冷暖房システム等の採用について検討すること。また、工場内に冷房と暖房の負荷が同時に存在する場合には熱回収システムの採用について検討すること。さらに、排熱を有効に利用できる場合には、排熱駆動型熱源機の採用についても検討すること。
2)空気調和を行う部分の壁、屋根については、厚さの増加、熱伝導率の低い材料の利用、断熱の二重化等により、空気調和を行う部分の断熱性を向上させるよう検討すること。また、窓にあっては、ブラインド、熱線反射ガラス、選択透過フィルム等の採用による日射遮へい対策も併せて検討すること。
3)負荷の変動が予想される空気調和設備の熱源については、適切な台数分割及び台数制御の採用、部分負荷運転時に効率の高い機器又は蓄熱システム等の採用により高効率な運用が可能な熱源システムに改善するよう検討すること。
4)空気調和設備については、外気導入量制御又は全熱交換器等の採用により、外気処理に伴う負荷の削減を検討すること。
5)送風機及びポンプを負荷変動の大きい状態で使用するときは、負荷に応じた運転制御を行うことができるようにするため、回転数制御装置等による変風量システム及び変流量システムに改善するよう検討すること。また、送風量及び循環水量が低減できる大温度差の取れる熱交換器の採用についても検討すること。
6)配管及びダクトは、熱伝導率の低い断熱材の利用等により、断熱性を向上させるよう検討すること。
2]給湯設備に関しては、次に掲げる措置、建築物判断基準(給湯設備に係るエネルギーの効率的利用に関する事項に限る。)を踏まえた措置等による給湯設備のエネルギーの効率的利用の実施について検討すること。
給湯設備を設置する場合には、効率の高い熱源設備を活用したヒートポンプシステム及び凝縮熱回収方式等の採用について検討すること。

(7) 照明設備戻る
照明設備に関しては、次に掲げる措置、建築物判断基準(照明設備に係るエネルギーの効率的利用に関する事項に限る。)を踏まえた措置等による照明設備のエネルギーの効率的利用の実施について検討すること。
1]照明設備は、高周波点灯方式の蛍光ランプ(Hf蛍光ランプ)、HIDランプ等効率の高い光源を使用した照明器具を採用するよう検討すること。なお、点灯回路を含めた光源の効率のほか、照明器具及び設置場所の大きさ並びに内装仕上げ(反射率)により個々に決定される照明率を含めた総合的な照明効率が優れた設備となるよう検討すること。
2]照明設備については、昼間は昼光を利用をすることができ、また、照明設備を施した当初や光源を交換した直後は高い照度を適正に補正し省電力を図ることができるようにするため、減光が可能な照明器具の選択や照明自動制御装置の採用を検討すること。
3]照明は、不必要な場所及び時間帯の消灯又は減光のため、人体感知装置の設置、計時装置(タイマー)の利用等について検討すること。

2.その他エネルギーの使用の合理化に関する事項戻る

(1) 熱エネルギーの効率的利用のための検討
熱の効率的利用をはかるためには、有効エネルギー(エクセルギー)の観点からの総合的なエネルギー使用状況のデータを整備するとともに、熱利用の温度的な整合性改善についても検討すること。

(2) 余剰蒸気の活用等
1]工場において、利用価値のある高温の燃焼ガス又は蒸気が存在する場合には、(1)の観点を踏まえ、発電、作業動力等への有効利用を行うよう検討すること。また、複合発電及び蒸気条件の改善により、熱の動力等への変換効率の向上を行うよう検討すること。
2]工場において、利用価値のある余剰の熱、蒸気等が存在する場合には、(1)の観点を踏まえ、他工場又は民生部門において有効利用を行うよう検討すること。

(3) 未利用エネルギーの活用
1]可燃性廃棄物を燃焼又は処理する際発生するエネルギーや燃料については、できるだけ回収し、利用を図るよう検討すること。
2]工場の周辺において、下水、河川水、海水等の温度差エネルギーの回収が可能な場合には、ヒートポンプ等を活用した熱効率の高い設備を用いて、できるだけその利用を図るよう検討すること。


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