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『ファクター4--豊かさを2倍に、資源消費を半分に』
E・U・フォン・ワイツゼッカー
エイモリー・B・ロビンス
L・ハンター・ロビンス 共著
佐々木 建 訳
四六判・並装・468頁 定価(本体2,600円+税)

ヨーロッパでは今、「ファクター」という言葉が流行している。今年6月にはこのテーマで国際見本市も開催された。「倍数」、つまり10倍、4倍という単純な計算用語で、研究者仲間が使っていた「身内言葉」が地球環境問題のキーコンセプトとして突然流行し始めたのだ。簡単にいうと、「ファクター」とは資源・エネルギー利用の飛躍的な効率化をはかることの象徴的表現である。

ファクター論は企業経営のエコロジー的見直しにとどまらず、大胆な産業構造の変化(エコ効率革命)と消費のエコロジー化(エコ生活革命)を促進しようとする。つまり、産業の脱物質化と生活革命をつなぐ概念でもある。

資源の利用効率を高めなければ、爆発する人口に伴う不均衡はますます拡大する。廃棄・排出物の増加のテンポがこのままでは、地球の維持能力さえも壊滅させかねない。人間がつくりだした,とりわけ先進国の生産・生活様式がつくりだした物質の奔流を抑制して地球の破局を押しとどめること、つまり物質の流れを「ゆりかごから墓場まで」(素材採取から廃棄に到るまで)徹底的に削減し、資源を途上国と将来世代に残し、同時に地球環境に対する負荷を削減すること、これがファクター論の基調である。

ファクター論を実現するには、経済的,社会的コンセンサスが不可欠である。企業や産業界にとっては収益の保証が、消費者や市民にとっては現在の豊かさの水準を損なわないことが前提となる。人類が破局を回避するために残された時間が限られているとはいえ、コンセンサスを得るための啓蒙と普及にかなりの時間が必要だろう。

1995年に,E・U・フォン・ワイツゼッカーはエネルギー問題の多様な提案で著名なロッキーマウンテン研究所のA・B・ロビンス,L・H・ロビンスと共同で『ファクター4』を刊行し、この種の出版物としては空前の売れ行き示してヨーロッパ社会に受け入れられた。彼らは先進国内部ですでに実現されているエネルギー,素材,輸送分野の資源・エネルギー利用効率4倍化の成功事例を収集し、その体系化を試みている。そして、ファクター4が実現可能なこと、先進国におけるさらなる効率化についてコンセンサスを得るための時間をかせぐことが必要なことを強調し、その実現による将来社会の展望を示している。それらの事例は一見したところ実に平凡だが,しかし、どこにでもあるような技術とノウハウの活用と組合せによって簡単に実現できることを明快に示し、そのような現実味のある主張によってファクター哲学の定着を目指そうとしたところに彼らの主張の高い倫理性が示されている。

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