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監修の言葉
 
 中学や高校の実験室で使用されているガラス製のリービッヒの冷却器が,おそらく誰もが最初に目にする熱交換器であろう。ミュンヘンのドイツ博物館で再現されている彼の実験室に原形を見ることができるが,1830年代に考案されてからほとんど形を変えることなく今日に至っている。人類が火を使って暖をとることを知って以来の長い歴史のなかで,私たちはリービッヒ冷却器のような素朴なものから精密な制御装置の温度維持機構まで,種々の熱交換器を生み出してきた。
 熱交換操作は,単に物を暖めたり冷やしたりするばかりではない。洗濯物を乾かしたり,エアコンで室内の湿度を下げたり,果物の発酵液から純度の高いアルコールを分離したりと,乾燥・調湿・蒸留などの各操作において重要な役割を果たし,そこに何らかの形の熱交換器が組み込まれている。
 財団法人省エネルギーセンターが「熱交換器ハンドブック」を刊行するのは2度目である。初版が刊行された1979年からすでに26年が経過しており,この間の熱交換器自体の進歩と応用分野の広がりを考えると,改訂版とすることには無理があり,本書はまったく新規の出版として企画されたものである。
 このたびの刊行にあたっては,熱交換器を機種別に紹介するだけでなく,チタンやセラミックなど進歩の著しい材料,水管理や探傷技術など設備保全というソフト面からの解説を加えた。また一つの製造プロセスには多数の熱交換器が組み込まれているが,この熱交換ネットワークの最適な熱利用システムはどのように決定したらよいのか,さらに地域の冷暖房システムにまで広げたらどうするのか,といった問題も取り扱った。今,熱交換器はデスクトップパソコンの除熱システム,床暖房,ガスエンジンコージェネレーション,燃料電池など,次々と新しい応用分野が開発されている。これら新しいシステムについても別立ての編を設けて紹介することとした。熱交換器に関する類書はあっても,ハード・ソフトの両面から,そしてシステム面からも解説した本はないと自負している
 大気温暖化,熱帯雨林減退など地球規模の環境破壊が憂慮されるなかで,省エネルギーの重要性はますます高まっている。熱エネルギーを有効に利用して製造工程の合理化を図ることが肝要であり,熱交換器を使う技術者は,最適な熱利用システムを設計すること,最適な熱交換器を選定することが求められている。本書は熱交換器全般にわたって実際に役立つ知識と情報を与えるものである。
 多岐にわたる項目を考え,それにふさわしい執筆者を得ることは,到底1人でできることではない。別記するように学界,業界から本分野にくわしい識者の参加を得て編集委員会を組織し,数次にわたる討議を経て初めてなし得たことであった。多数の著者による執筆となるため,記述内容に過疎や重複が生じることが考えられたため,編集委員会は第1次の素原稿の読み合わせも行なった。その結果としての面倒な加筆訂正依頼に応じてくださった執筆者の方々には厚く御礼申し上げたい。そして共同監修の吉田英生教授,編集委員会の各位の2年半に及ぶお骨折りには感謝の言葉もない。まだ不十分なところが種々あることと思う。監修者の力量不足のなせるところであり,各方面からの御指摘を得て少しでも良いものにするべく今後も努力を続けていきたいと考えている。
 最後に統一された記述や充実した資料編は省エネルギーセンター出版部の山川三世氏の絶大な努力の賜であることを記しておきたい。
 
2005年7月   
 
吉田邦夫
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