(別添 2)
区分及び目標値について

1.区分
区分に当たっては、ランプの形状、出力、点灯方式等に着目したものとした。
(1)ランプの形状に着目した区分
ランプの形状については、直管形、環形、コンパクト形が存在するが、このうちコンパクト形は直管ランプから派生したものとも言え、区分設定に当たっては直管形の区分に属するものとした。従って、ランプの形状に着目した区分設定については、直管形、環形の区分を設けることとした。
(2)ランプの出力に着目した区分
ランプの出力については、直管形、環形のそれぞれにおいて多様の出力のものが存在する。このうち、直管形については、110形、40形、20形の区分を設け、また、環形については、使用するランプの大きさの区分の総和が72超、62超72以下、62以下の区分を設けた。
(3)ランプの点灯方式等に着目した区分
直管形40形については、ランプの種類及び点灯方式によって、Hf形、ラピッドスタート形、スタータ形が存在し、それぞれ構造上の違いによる効率の格差が存在し、また、消費者ニーズも異なることから、市場実態を踏まえ別区分とすることとした。また、蛍光灯器具に使用される安定器については、電子安定器式と磁気安定器式が存在するが、特に、直管形20形及び環形で使用するランプの大きさの区分の総和が62以下のものについては、電子安定器が磁気安定器と比べ高価であることから、電子安定器採用に伴う導入コスト上昇分をランニングコストで回収できないことから別区分とした。
(4)なお、卓上スタンドについては、上記(1)〜(3)とは別に、製品特性を踏まえランプ(コンパクト形/直管形)の違いに応じた区分を設けた。
それぞれの区分に属するランプの種類に応じた器具は以下のとおりである。
区分区分に属する器具
1] 直管形110形ラピッドスタート形蛍光ランプを用いるもの・110形ラピッドスタータ形蛍光ランプを用いる器具
・96形コンパクト形蛍光ランプを用いる器具
・105形高周波点灯専用コンパクト形蛍光ランプを用いる器具
2] 直管形40形高周波点灯専用直管形蛍光ランプを用いるもの・40形、65形高周波点灯専用形蛍光ランプを用いる器具
3] 直管形40形ラピッドスタート形蛍光ランプを用いるもの・40形ラピッドスタート形蛍光ランプを用いる器具
・36形、55形コンパクト形蛍光ランプを用いる器具
・32形、42形、45形高周波点灯専用コンパクト形蛍光ランプを用いる器具
4] 直管形40形スタータ形蛍光ランプを用いるもの・40形スタータ形蛍光ランプを用いる器具
5] 直管形20形スタータ形蛍光ランプを用いるものであって電子安定器式のもの・20形スタータ形蛍光ランプを用いる器具であって、電子安定器式の器具
6] 直管形20形スタータ形蛍光ランプを用いるものであって磁気安定器式のもの・20形スタータ形蛍光ランプを用いる器具であって、磁気安定器式の器具
7] 使用する環形蛍光ランプの大きさの区分の総和が72を超えるもの(補足)・「ランプの大きさの区分」とは、JIS C 7601の付表1に規定する大きさの区分をいう。
大きさの区分ランプ種別
20FCL20/18
30FCL30/28
32FCL32/30
40FCL40/38
(FCLは環形スタータ形蛍光ランプを表す)
・高周波点灯専用環形ランプの大きさの区分は、定格ランプの大きさの区分の総和 プ電力の値とする。ただし、高出力点灯するものにあっては、高出力点灯時のランプ電力の値とする。
8] 使用する環形蛍光ランプの大きさの区分の総和が62を超え72以下のもの
9] 使用する環形蛍光ランプの大きさの区分の総和が62以下のものであって電子安定器式のもの
10] 使用する環形蛍光ランプの大きさの区分の総和が62以下のものであって磁気安定器式のもの
11] コンパクト形蛍光ランプを用いた卓上スタンド・27形、18形、13形コンパクト形蛍光ランプを用いる器具
12] 直管形蛍光ランプを用いた卓上スタンド・20形、15形スタータ形蛍光ランプを用いる器具
(5)区分設定理由
●区分1](110形ラピッド形)について
このランプは、高出力形の蛍光ランプで管長が2,367oと長く、スーパー、工場など、より広い空間で高照度を得る場合に用いられる。40形蛍光ランプは管長が1,198oであり、110形の蛍光ランプとの互換性はないことから区分を別とする。
●区分2]3]4](直管40形)について
これらの区分は同じサイズの蛍光ランプを用いた照明器具であるが、用いるランプの 種類が異なり、その特質も次のように異なる。
蛍光ランプの種類始動原理特長欠点
高周波点灯専用形蛍光ランプ高周波点灯専用ランプで、専用電子安定器(インバータ)により、電極の予熱と同時に電極間に高電圧を印加して、1秒程度で点灯する。高周波点灯のため、エネルギー消費効率がよい。(1) 専用照明器具だけにしか使用できない。
(2) ラピッド式に比べ高価
ラピッドスタート形蛍光ランプガラス管の内面又は外面に始動補助導体を付加したランプで、電極の予熱と同時に電極間に高電圧を印加して1秒程度で点灯する。施設用照明器具として最も普及している。(1) スタータ式に比べ高価
スタータ形蛍光ランプ特別な予熱始動機構を持たないランプで、電極予熱とキック電圧の発生をグロースタータにより行い、2秒程度で点灯する。安定器が小形軽量で、器具価格が最も安価である。(1) 即時点灯は出来ない
(2) グロースタータの交換必要
(3) 多数灯の一斉点灯に不向き
40形ランプを使用する照明器具については、ランプ毎に点灯が可能な器具が異なり、また、技術動向、普及度合い、ニーズも異なることから、ランプの違いに着目した区分を設けることとする。
なお、それぞれの区分の特徴、区分設定の必要性については以下のとおり。
区分2]の高周波点灯専用型は、1991年に開発されて以来、工場、事務所等広い範囲を照明する場所で利用されてきており、エネルギー消費効率が高いことから、今後、一層の普及促進を図る必要があるが、器具及びランプの価格が高く、専用の器具・ランプの使用が必要であること、普及が現時点では1割程度であること等から独立した区分を設けることとする。
区分4]の40形スタータ形は、上表に示すような欠点がありながら一部用途に広く使
用されている器具であり、一般商店等比較的小規模でメンテナンスの工数があまり問題にならない場所や工事現場などの仮設建物で長期の使用を必要としない場所において利用されている。また、価格的にも最も安価であり、区分3]と同一の区分とした場合、イニシャルコストのアップ分を省エネルギーによる電気料金の低減分で回収するためには、少なく見積もっても約11年の使用期間が必要と試算され(参考1)、価格上昇分を一定の使用期間におけるランニングコストの低減により回収できない蓋然性が高い。
従って、区分3]4]を設けることとする。
●区分5]6](直管20形スタータ形)について
住宅用に使用される蛍光灯器具の種類は、天井への取付状態によって、つり下げ形
とじか付け形に、また形状によって、丸形器具と角形器具に分けられる。使用ランプの区分でみると、丸形器具は環形蛍光ランプを使用し、角形器具は小形の直管形蛍光ランプ(20形)を使用している。これらは消費者の好みによって選択されている。
区分5]6]の20形直管形蛍光ランプを使用した器具の磁気安定器・電子安定器(インバータ)比率をみると72.2%が磁気安定器式である。この種類の器具は、磁気安定器式と電子安定器(インバータ)式の価格差が大きいために磁気安定器式が主力製品となっているものである。
20形4灯用磁気安定器式器具を電子安定器(インバータ)式に置き換えた場合の経済性は、イニシャルコストのアップ分を省エネルギーによる電気料金の低減分で回収しようとした場合、同じ明るさの20形3灯用電子安定器(インバータ)式と比較した場合約11年の使用期間が必要と試算され(参考1)、価格上昇分を一定の使用期間におけるランニングコストの低減により回収できない蓋然性が高い。
従って、低価格品に対する需要に応える必要からも区分を分けることとする。
●区分7]8]9]10](環形)について
環形蛍光ランプを使用した器具は、40形、32形、30形ランプの組合せによる製品構成となっているが、これら使用するランプの効率は、三波長形昼白色 (EX-N) の場合40形が 86.1lm/w、32形が 83.7lm/w、30形が 75.0lm/wと30形が他に比較して低いものとなっており、区分設定を一つの区分とした場合には、30形を使用する器具の効率は相対的に低くなることから、適切な目標値の設定が困難である。
環形蛍光ランプ用器具は部屋の広さに応じて、102形タイプ、72形タイプ、62形タイプと使用構成が確立しており、消費者の使用ニーズに合わせ区分を設定することが適当と考える。
なお、使用する蛍光ランプの大きさの区分の総和が62以下のものは、電子安定器
(インバータ)化も進んでおらず、電子安定器式と磁気安定器式のものの価格差も大きく、イニシャルコストのアップ分をランニングコストの低減分で回収することができない蓋然性が高いことから別の区分とする。(参考 1)
●区分11]12](卓上スタンド)について
卓上スタンドについては、卓上スタンドで使用される蛍光ランプは、コンパクト形と直管形が主流であり、この2つのランプの効率は、コンパクト形が66.7lm/w、直管形が64.7lm/wとランプの属性により差が生じ、また、消費者のニーズに応じランプの使用が設定されることから、区分を分けることとする。

2.目標値の設定
(1)目標値の設定にあたり除外した特殊品
環形蛍光灯器具の高周波点灯専用形については、製造メーカーが限定され、約1年前に市場に導入されたことから出荷比率も約0.5%と低く、また、蛍光灯卓上スタンドを除くコンパクト形蛍光灯器具については、正方形器具の特徴を生かした照明に使用されているものであり、当該製品のエネルギー消費効率を目標基準値として設定した場合、広く用いられている技術を用いた製品が存在し得なくなり、極度に市場をゆがめる蓋然性が高いため、目標値設定に際し特殊品として除外した。
しかし、目標値の設定に当たっては、これらの器具の将来の普及見込みを技術改善等による効率改善分として加味することとした。(参考 2)
(2)製品分布と目標値
●は代表的な器具の値を示す
(3)技術動向
1]蛍光ランプ
蛍光ランプは1938年にGE社によって初めて実用化され、今日まで、新しい蛍光体の開発や放電技術、量産技術の改善等が行われてきているが、主要な技術課題としては、発光効率の改善、光束維持率の向上、周囲温度による特性への影響の軽減等が挙げられ、研究開発が行われている。
発光効率の改善については、3波長域発光形蛍光ランプの開発により大きく向上したが、この蛍光体の可視光放射への量子効率は既に0.8を超えており、今後大幅な効率の向上は期待しにくい。
光束維持率の向上については、紫外線による劣化や点灯中の化学反応による劣化の少ない蛍光体の開発等が課題となるが、短期間での実現は困難。
周囲温度による影響の軽減については、水銀に替わる効率の良い代替物質が開発されれば、周囲温度による全光束への影響が軽減されることが期待できるが、現存する物質では有効なものは見つかっていない。
2]点灯装置
蛍光ランプの点灯装置は大別して、磁気式安定器と電子式安定器に分けられ、それぞれその特性に応じた研究開発が行われている。
磁気式安定器は、約60年の歴史の中で様々な改良が行われ、回路方式、構造などの基本的な部分は既に確立されており、今後は材料的な進歩に期待するところが大きい。しかし、現状に替わる材料については、コスト問題も含めすぐには大きく改善することが可能となる材料の開発は期待できない。
電子式安定器は、インバータを使用して高周波点灯にすることによって、商用波(50/60Hz)点灯に比し蛍光ランプの発光効率が約15%程度向上し、その分省エネルギーに寄与するものであるが、蛍光灯点灯装置としてこのインバータ方式に替わる更なる高効率点灯方式は、現在のところ見出されていない。
3]高周波点灯専用器具の動向
1991年に「Hf蛍光灯器具」と呼ばれる高周波点灯専用蛍光ランプと専用電子安定器(インバータ)を用いた高周波点灯専用器具が開発され、さらに高効率の蛍光灯器具が実現した。 Hf蛍光灯器具は、コスト高と専用形器具であることもあり、普及率はまだ低いが、今後、高周波点灯専用器具の普及が進むことが期待される。

3.目標年度の設定
各区分の目標値は、12区分のうち10区分が電子安定器(インバータ)式のものとなっており、該当区分の製品は目標年度において100%インバータ化する必要がある。この結果、施設用(区分1]〜4])全体では75%、住宅用(区分5]〜12])全体では92.5%がインバータ化されることが見込まれる。
インバータ化を図る上での問題点としては、
1]基本技術は開発済みであるが、各企業にとってはトップランナーの効率に匹敵する回路の設計、開発が必要
2]コストダウンを図るための生産技術開発、設備投資が必要
3]ランプの温度特性を考慮した器具の設計、開発及びそれに伴う生産技術開発、設備投資が必要
があるが、最も重要となるのは、需要(普及)の程度と供給体制の整備に必要な期間である。
従って、目標年度設定に当たっては、インバータ化率の動向に着目し、出荷ベースで目標値を達成できる最短期間と2010年度の普及ベースで相当な効率改善が見込めることを条件に検討し、目標年度を2005年度(平成17年度)とした。

4.消費効率の改善
上記の「目標基準値」を設定した場合の、平成8年度実績値からの消費効率の改善は、ある仮定に基づく試算では、2005年度において、約20%の改善が図られると試算される。(参考 3)

Source:MITI / Copyright(C) 1996-1999 ECCJ [戻る]