(別添3)
目標基準値及び目標年度
別添2の2.に基づいて設定された各区分に応じて、エネルギー消費効率が最も優れている製品の性能等を勘案して、各々の目標値を設定することとする。
区分毎の目標基準値は一定の数値により、目標基準値を設定するものとする。
(1) 目標基準値の設定の考え方
1)設定の考え方
別添2のとおり、区分は、定着器に関する技術的要因を基に設定してあるとともに、複写機のエネルギー消費の大宗(約6〜7割)は定着器における消費であることから、各区分の目標基準値を考える場合には、定着器におけるエネルギー消費をベースに考える必要がある。また、定着器以外の部分のエネルギー消費は約3割〜4割と相対的に小さく、その変動による影響は、同一区分内ではそれ程大きいものではなく、捨象できるものと考えられる。
従って、各区分内での目標基準値は、定着器のエネルギー消費をベースとして、一定の数値で設定することが適切であると考えられる。
2)サーフ定着方式について
サーフ定着方式とは、薄膜フィルムを介してヒーターを紙に集中的に加熱する方式であり、現在のところ低速機にのみ適用されている。
本方式は、
1.当該技術の基本特許はもとより、多くの周辺特許も1社が所有していること
2.現在の熱ローラ定着方式その他の方式では、サーフ定着方式のエネルギー消費効率を上回ることがほぼ困難と考えられること
3.そのため、サーフ定着方式の複写機が出荷されている区分では、当該方式以外の広く用いられている技術(いわゆる熱ローラ定着方式)を用いた製品が存在し得なくなり、当該区分が1社に独占され、極度に市場をゆがめるおそれがあること
の理由から、サーフ定着方式の複写機を特殊品とし、目標基準値の設定に当たっては除外することが適当と考える。
(2) 技術開発の動向を踏まえた目標値設定のあり方
1)技術開発の動向
複写機の省エネルギーに関わる技術開発は、消費電力の大きい定着器の改善はもとより、トナーの低融点化、感光体の感度向上、照明光源の電力低減、駆動系トルクの低減、モーター・トランス、電源の高効率化及び省エネルギーモードの組み込み等、幅広い分野での研究開発が進められている。
ここでは、エネルギー消費効率の改善に関連する技術開発動向をまとめた。
1)定着器
(熱ローラ定着方式)
低速機から高速機まで用いられており、定着機能、紙の搬送機能の信頼性からこの方式が一般的である。
省エネルギーの面からは、低速機分野では定着ローラの薄肉化により、待機時の省エネルギー化を大幅に改善している。また、中高速機分野では、定着ローラの薄肉化のみならず、トナーの低融点化を含めた定着プロセス技術の改善を進めて来たが、ほぼ限界の状況となっており、更なる改善はほぼ困難であると考えられる。
(サーフ定着方式)
サーフ定着方式では薄膜フィルムを使用しているため、複写速度の早い中高速機への適用は、熱供給及び紙の搬送信頼性の面から、技術的課題が大きく、相当困難であると考えられる。
(その他の方式)
特許情報からは、放射加熱、抵抗加熱、誘導加熱等の方式が提案されているが、実用化には多くの問題(定着性、熱効率性、耐久性、安全性等)があり、現時点では採用されておらず、今後の見通しも必ずしも立っていないと考えられる。
2)トナーの低融点化
省エネルギー効果は大きいため、定着器と合わせて改善が進められて来たが、トナー成分(粉体)の保存性(トナーが凝集しないこと)等の問題から、更なる改善はほぼ困難と考えられる。
3)感光体の感度向上
感光体の感度向上は、かねてより相当改善を進めてきており、更なる改善はほぼ困難と考えられる。
4)照明光源の電力低減
照明光源のランプは部品メーカーより購入しているが、電力低減についてはかねてより相当改善を進めてきており、更なる改善はほぼ困難と考えられる。
5)駆動系トルクの低減
駆動系は、省スペース型複写機の市場ニーズにより小型化、軽量化が進み、これに伴いトルクの低減も行って来たが、更なる改善はほぼ困難であると考えられる。
6)モーター・トランス、電源の高効率化
モーター・トランス、電源は部品メーカーに依存しているが、今まで徐々に改善されて来た。今後も僅かではあるが改善されると予測している。
上記のようなエネルギー消費効率の改善に関する現在の技術開発動向を踏まえれば、エネルギー消費効率の大幅な改善は必ずしも期待できないものと考えられる。
一方、個々の技術の定量的な改善値を求めることは困難ではあるものの、複写機の各部に対する地道な取り組みにより、僅かな技術的改善が図られ、若干ではあるが更なるエネルギー消費効率の向上も期待されるところ。
このため、今後も技術開発によるエネルギー消費効率の改善を着実に進めることを想定して、更なる効率改善分を目標値の設定に反映することとする。
2)将来の技術開発見通し等により今後想定される効率改善分
1)のような考え方を基に、区分毎のトップランナー値に対して、技術開発によるエネルギー消費効率改善への着実な努力を想定した場合の改善分を以下の表の比率とする。 今後想定される効率改善分としてトップランナー値に適用する比率
注)複写機の省エネルギー化のこれまでの技術的傾向としては、定着器の加熱ローラの外径及び肉厚が相当必要となる高速機よりも、加熱ローラの外径及び肉厚をそれほど必要とせず、薄肉化が比較的可能な低速・中速機での省エネルギーがより進みやすいと考えられるところ。上記比率は、このような傾向を踏まえたものである。
(3) 目標基準値の設定
(1)及び(2)の考え方を基に、目標基準値を設定すると以下のとおり。
・製品のないA3Y機の60枚/分以下の区分は、A3機の1.4倍を目標値に設定した。
・71〜80枚/分の区分は、61〜70枚/分の区分の目標基準値(383)と81〜85枚/分の区分の目標基準値(483)の平均の値(433)とした。
上記「目標基準値」に基づく、目標年度(2006年度)における複写機のエネルギー消費効率について、一定の条件に基づき、1997年度の実績値と比較すると、約30%のエネルギー消費効率の改善になると試算される。(参考3「エネルギー消費効率の改善に関する試算」参照)
目標は、複写機の要素技術開発期間、製品開発期間及びその後の普及状況を考慮し、2006年度において出荷される複写機から適用する(リードタイムは7年)。
目標年度の設定表
年度 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
要素技術開発
製品開発
製品普及
(法定償却5年)
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