(参考 4)
エアコンディショナーにおける省エネルギー技術の今後の見通し
及びエネルギー消費効率の改善について

1.技術開発の動向及び今後の見通しについて
エアコンディショナーに関する省エネルギー技術は、基本的にはユニットを構成する熱交換器、送風機、圧縮機といった各構成機器の改良技術であり、これまで材料の代替、形状の改良、駆動方式の変更等各種の改良が行われてきた。
しかし、これら要素技術の開発も限界に近いところに達しており、今後はわずかな改善があったとしても、革新的な技術開発は期待できない状況にある。
なお、こうした限界近くに達している各種省エネルギー技術の成果が盛り込まれたエアコンディショナーが、現在の最高水準のエネルギー効率を実現している。
したがって、今後は、需要動向や製造コストに配慮しながら、これら各種省エネルギー技術を可能な限り多くの製品に投入してゆくことが重要な課題となっている。
各要素技術の改善と今後の見通しは、以下のとおり。

(1) 熱交換器について
熱交換器は、室内ユニットでの室内空気と冷媒の熱交換、室外ユニットでの室外空気と冷媒との熱交換を行うもので、エアコンの最も重要な構成要素の1つである。
この熱交換器には、空気側のプレート状のアルミフィンに、冷媒側の銅管が貫通するフィンチューブ形の熱交換器が使用されている。
A)熱交換用フィン
当初の熱交換器のフィンは、フラットなアルミプレート(プレートフィン)が使用されていたが、波状に加工したコルゲートフィン、切込みを入れたスリットフィンが採用され、さらにスリット形状の改良が進められてきた。
現状では、スリット形状の更なる改良は相当困難な段階まできていると考えられる。

B)熱交換用銅管
当初の熱交換器には、一般の銅管と同じく内面加工をしない平滑管が使用されていたが、省エネルギーのため、内面溝付き管が開発され、さらに溝形状の最適化が進められてきた。
現状の内面加工技術では、今後の更なる改善は相当困難な段階まできていると考えられる。

また、冷媒と銅管との熱伝導を改善するため、管径の細径化が進められてきた。流量による抵抗との関係で、更なる細径化は相当困難な段階まできていると考えられる。
[例]  管径 9.5mm → 7.0mm → 6.3mm
C)熱交換器の形態
ルームエアコンのほとんどを占めるセパレート壁掛け形の室内ユニットにおいて、従来の熱交換器の断面は平面状に成形されていたが、限られたスペースの中で熱交換面積を拡大するため、曲げ加工をしたもの、曲面に成形したものが開発されたきた。
今後の見通しとしては、現状の寸法内での更なる拡大は相当困難な段階まできていると考えられる。

     <2段曲げ>            <多段曲げ>

(2) 送風機について
A)室内送風機
室内ユニットに用いる送風機は、ユニットの形態によって異なる方式のファンが使用される。代表的なものが、壁掛け形に用いられる「クロスフローファン」、業務用のカセット形などに用いられる「ターボファン」である。

[クロスフローファン]
金属板を加工したブレードで組立てていたが、プラスチック製にしてブレード断面の翼状形状の採用、ファン径の大径化により、騒音を抑えながら風量拡大を図ってきた。
ファンとブレードの配置・成形についても、ブレードの間隔をランダムにする、ファンの軸に角度を持たせるなどの改良が進められてきている。
今後の更なる改善は相当困難な段階まできていると考えられる。

<ランダムピッチ>

[ターボファン]
ターボファンにおいても、ブレードの3次元加工などの改良が行われているが、製品の寸法上の制約のため、今後の改善の余地はほとんどないと考えられる。
B)室外送風機
エアコンの室外ユニットには、一般にプロペラファンが使用されているが、従来の金属板の加工からプラスチック製とし、翼形状の改良により騒音を抑えながら大風量化を図ってきた。
今後の更なる改善は相当困難な段階まできていると考えられる。
(3) 圧縮機について
A)圧縮機の方式の転換
圧縮機はエアコンの心臓部であり、高精度な加工技術が要求される中心部品である。古くからレシプロ式(往復動式)の圧縮機が使用されてきたが、回転式のロータリー圧縮機が小型の分野から採用され、中・大型にはスクロールが開発され、広く使用されるようになってきた。
これらの方式は、高い加工精度を要求され、この技術の向上とともに体積効率の向上は限界に近くなっている。原理的・生産技術的に可能な方式で、現状以上のエネルギー消費効率を実現できる圧縮方式の確立は現時点では困難と考えられる。
<ロータリー>         <スクロール>
B)インバーターの採用と直流ブラシレスモーター化
圧縮機を駆動するモーターには交流誘導電動機が用いられてきたが、回転数を制御するインバーターが採用され、家庭用エアコンを中心に急速に普及を見た。 また、インバーターはAC→DC→ACと電流を変換するものであるが、変換したDCにより直流ブラシレスモーターを直接駆動する方式が開発されてきた。
また、ローターに使用する磁性体についても、フェライトに替え希土類金属であるネオジウムを採用したものが開発されている。
実用の範囲で、現状以上の効率を持つ電動機の開発は現時点では困難と考えられる。

2.HFC冷媒変換にともなう効率の低下について
オゾン層保護への対応(別添 4「エアコンディショナー目標年度について」参照)のため、過去数年にわたりHCFC22等に替わる新冷媒の開発・評価及び新冷媒による製品の開発・評価を行ってきた。
その結果、家庭用はHFC410A、業務用はHFC407CなどのHFC系冷媒を採用する方向が大勢となっているが、
(社)日本冷凍空調工業会が行なった代替冷媒の性能評価データによれば、家庭用・業務用エアコンにおけるHCFCからHFC冷媒への転換によって、概ね3〜10%程度のエネルギー消費効率の低下は避けられないとされている。

3.エネルギー消費効率の改善について
上記のように、エアコンディショナーの要素技術の開発は既に最高水準に達していると考えられる。現時点において、これらの省エネルギー技術を製品に円滑に適用することができれば、低COPの製品であっても、COPの向上が期待できると考えられる。
一方、これらの技術は効果的な材料の利用によるものがほとんどであり、結果として、高価な材料の利用により製品価格が大幅に上昇したり、加工が難しい材料の利用により製品寸法が大きくなり設置上の問題が生じる等、これら技術の一層の活用には現実的に相当困難な面が伴うものと考えられる。
また、2.のように、今後冷媒のHFCへの転換が促進されることにより、エネルギー消費効率の若干の低下が見込まれるところであり、こうした状況を総合的に踏まえれば、更なるCOPの向上はに厳しいものと考えられる。
このため、エアコンディショナーにおいては、各区分における最大のCOP値を目標基準値として設定し、その達成に向けて努力することが適当と考えられる。
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