2000年に向けた総合的な省エネルギー対策

平成9年4月1日
総合エネルギー対策推進閣僚会議


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1.産業分野
(1) 基本的考え方
(2) 具体的対策
ア.事業者による一層のエネルギー管理等の促進
イ.省エネルギー設備の導入支援
ウ.情報提供等の推進
2.民生分野
(1) 基本的考え方
(2) 具体的対策
ア.省エネルギー型住宅の普及促進
イ.住宅以外の建築物の省エネルギー化の推進
ウ.エネルギー消費機器対策
3.運輸分野
(1) 基本的考え方
(2) 具体的対策
ア.交通機関単体のエネルギー消費効率の向上
イ.交通対策
ウ.物流対策
4.横断的対策等
(1) 基本的考え方
(2) 具体的対策
ア.普及・広報
イ.教育
ウ.地域における取組等



 近年、エネルギー価格の低位安定、国民生活のゆとりと豊かさの追求を背景としたライフスタイルの変化等により、我が国の最終エネルギー消費は各部門とも引き続き増加傾向にあるとともに、民生部門、運輸部門を中心に高い伸び率を示している。また、我が国は、73年の第1次石油危機以降、産業部門を中心にエネルギーの利用効率化を進め、世界的にも最高水準を達成しているものの、95年度までの最終エネルギー消費の対GDP原単位が4年連続で悪化するなど、省エネルギーの停滞が顕著になってきている。

 一方、地球温暖化問題への対応については、長期エネルギー需給見通し(94年9月、総合エネルギー対策推進閣僚会議了承)にあるように、地球温暖化防止行動計画(90年10月、地球環境保全に関する関係閣僚会議決定)に掲げられた二酸化炭素排出抑制目標を達成していくうえで、省エネルギーの推進は不可欠となっている。しかしながら、我が国の最終エネルギー消費は、92、93年度は1%未満の低い伸びにとどまったものの、94年度以降年率3%以上の高い伸びを示しており、95年度には、既に長期エネルギー需給見通しの2000年度の水準に到達した。こうした状況は、同計画の二酸化炭素排出量に関する目標の達成に危惧を生ぜしめており、我が国としては、2000年に向け省エネルギーの推進に対する最大限の努力が求められている。

 このため、政府としては、これまで講じてきた施策に加え、産業・民生・運輸すべての分野にわたり省エネルギー対策の一層強力な推進を図るべく、以下に掲げる施策に積極的に取り組むこととする。また、2000年に向けて、毎年、我が国のエネルギー需給をめぐる状況等を踏まえつつ、本対策の適切なフォローアップを行うこととする。

 なお、省エネルギーが真に実効を挙げるためには、政府による取組のみならず、ライフスタイルの見直しも含めた国民一人一人の一層の取組が不可欠である。今回の総合的な省エネルギー対策の取りまとめを契機として、国民一人一人の自発的な努力を促すよう政府としても国民に対する働きかけを今後一層強化することが必要である。

 また、こうした我が国の努力は、他国にも一層の省エネルギーへの取組を促す観点から、国際的にもアピールしていく必要がある。

1.産業分野

 (1) 基本的考え方

 産業分野においては、これまで省エネルギー設備投資の推進、エネルギー管理の適正化等により、大幅な省エネルギーを進め、世界的にも最高水準を達成しているものの、エネルギー価格の低位安定傾向が続く中、省エネルギー投資の経済性の悪化していることや、高付加価値化の追求等から、91年度以降はIIP(鉱工業生産指数)当たりのエネルギー消費原単位はむしろ悪化傾向にある。

 この分野における更なる省エネルギーのためには、今後一層、エネルギー管理の強化、省エネルギーに資する技術、設備の導入等を進めることが必要である。

 (2) 具体的対策

 ア.事業者による一層のエネルギー管理等の促進

・全工場における原単位年平均1%改善努力目標の設定等

 「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」に基づき「工場ごと又は事業者ごとにエネルギー消費原単位を年平均1パーセント以上低減させる。」との努力目標を設定し(97年2月措置済み)、全工場での自主的な省エネルギーの推進を図る。特に、エネルギー多消費工場である省エネ法に基づく「エネルギー管理指定工場」については、97年度定期報告から目標を達成できない場合の理由の記載を求める等実施状況をチェックし、必要に応じて指導、助言を行うとともに、その達成状況について取りまとめ、公表する。

・エネルギー管理指定工場に対する省エネ法に基づく指導の強化等

 エネルギー管理指定工場について、同法に基づく省エネルギー基準(工場におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準)の遵守状況を現地調査の実施等により調査し、エネルギーの適切な管理に関する基本的事項の遵守が不十分な工場に対しては、その遵守を強く指導し、必要があれば合理化計画作成の指示等の法的措置を発動する。

 そのほか、97年度からエネルギー消費原単位について、同業種における各工場の位置付け等に関して情報提供を行うとともに、企業としての省エネ投資判断を促すため、省エネルギー投資の判断が出来る者を役員クラスの中から企業の省エネルギーの責任者として任命するよう指導し、省エネルギー推進体制の整備を促進する。

・建設副産物対策の推進

 建設発生土のリサイクル率の向上により、運搬や処分に係るエネルギー消費の縮減を図るため、建設発生土の利用調整のための情報交換システムの拡充を図る。

 イ.省エネルギー設備の導入支援

・省エネ・リサイクル支援法に基づく承認基準の拡充

 「エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法(省エネ・リサイクル支援法)」に基づく低利融資に関する支援対象の承認基準を97年度から拡充(工場等において減少させる年間エネルギー使用量が3%又は3,000kl→1%又は1,000kl)し、省エネルギー設備投資に対する支援を強化する。

 ウ.情報提供等の推進

・主要業種における参考指標(ベンチマーク)の策定

 97年度中に、主要業種における省エネルギーの進展度合いを図る指標を策定し、各工場の省エネルギーの取組の参考値として活用を図る。

・工場の省エネ診断の実施等

 97年度からエネルギー管理指定工場ではない中規模工場について、公的な支援の下で診断事業を行う。併せて省エネ診断の内容、効果について広く情報提供する。

・エネルギー管理者シンポジウムの拡充

 エネルギー管理指定工場において選任されているエネルギー管理者の資質の向上を図るため、97年度からシンポジウムを全国各地で開催する。

・省エネルギーマーク制度の導入

 産業分野における効率的機器の導入を促すため、モーター等の産業用汎用機器を対象とした省エネマーク制度の導入について検討する。

・高効率モーターに係る新規JISの制定

 モーターの効率向上を図るとともに、ユーザーの認識を高めることにより高効率モーターの普及拡大を図るため、試験方法について国際基準(IEC規格)等との整合化を考慮しつつ、高効率モーターの新規JISの制定について検討する。

2.民生分野

 (1) 基本的考え方

 民生分野においては、これまでも建築物の省エネルギー化、家電製品等のエネルギー消費機器の効率化等を進めてきたが、世帯数や建築床面積の増加、電化製品の普及、大型化等によりエネルギー消費は一貫して増加してきている。家庭分野における一世帯当たりのエネルギー消費原単位も一貫して悪化傾向にあるとともに、業務分野における床面積当たりのエネルギー消費原単位も80年代後半以降悪化傾向を示している。

 この分野における更なる省エネルギーのためには、新築建築物の省エネルギー化を進めるとともに、大宗を占める既存建築物の省エネルギー改修を進めることが必要である。また、建築物の空調設備等の運転管理の適正化、エネルギー消費機器の効率化及び効率的なエネルギー消費機器の選択、適切な利用を進めることが必要である。

 (2) 具体的対策

 ア.省エネルギー型住宅の普及促進

(ア)新築住宅の省エネルギー化の推進

・住宅の省エネルギーに関する誘導的基準の策定・普及

 住宅の省エネルギー基準については、省エネ法に基づき、断熱性等に関し満たすべき水準を定めた、住宅に関する建築主の判断基準並びに設計・施工の指針を策定・公表しているが、高断熱住宅の普及を図るため、一層省エネルギー効果の高い誘導的基準(次世代省エネルギー基準(仮称))を策定・公表し、97年度から普及を図る。

 さらに、省エネ法に基づく現行の省エネルギー基準の普及状況、室内環境上の観点を勘案しつつ、次世代省エネルギー基準を省エネ法上の基準として位置づけることについて検討する。

・住宅の省エネルギー表示の実施

 省エネルギー型住宅の建築及びユーザーの選択を促すため、97年度から、住宅の省エネルギー性に関して消費者に分かりやすい表現での表示(省エネルギーマーク)の導入について検討し、できる限り早期にその実施を図る。

・住宅生産者に対する断熱施工技術者講習会の充実

住宅の断熱施工技術の普及を図るため、(財)住宅・建築省エネルギー機構が技術者に対する講習会を開催しているが、今後さらに多くの技術者の育成が必要であることから、地方公共団体や関連業界団体等に協力を要請し、97年度から講習会の充実を図る。

・自立・循環型コミュニティシステム(都市住宅)の導入の推進

 省エネルギー等の地球環境対策に配慮した都市居住を実現するため、都市住宅において、コージェネレーションシステムや水再利用・ゴミ処理システムの整備による自立・循環型コミュニティシステムの導入方策について、97年度から検討を行う。

(イ)既存住宅の省エネルギー化の推進

・省エネルギー型住宅の普及促進のための支援の拡充

 省エネ法の省エネルギー基準を満たす住宅については、住宅金融公庫において割増融資を適用するとともに、96年10月から新築工事に優遇金利を適用しているが、97年度からは住宅改良工事、中古住宅についても優遇金利を適用し、省エネルギー型住宅の普及促進のため、住宅金融公庫融資の一層の活用を図る。

・既存住宅の断熱構造診断の実施

 既存住宅の断熱改修を促進するため、97年度から、(財)日本住宅リフォームセンターによる増改築相談員の充実を図るとともに、断熱化が進んでない既築住宅の断熱構造の診断を行い、断熱化リフォームの提案を行う事業を新たに実施する。

 イ.住宅以外の建築物の省エネルギー化の推進

(ア)新築建築物の省エネルギー化の推進

・建築物の省エネルギー基準の見直し

 省エネ法に基づき、建築物の省エネルギー化のため、満たすべき水準を定めた、建築物に関する建築主の判断の基準について、97年度から省エネルギー化の一層の推進に向けた検討を行う。

・建築物の省エネルギー表示の実施

 省エネルギー型建築物の建築及びユーザーの選択を促すため、97年度から、建築物の省エネルギー性に関する表示(省エネルギーマーク)の導入に向けた検討を行う。

(イ)既存建築物の省エネルギー化の推進

・建築物の省エネ診断

 97年度から事務所ビル等の建築物に関して省エネ性能の診断手法、省エネ改修効果の予測手法等を検討し、その成果を用いて省エネルギー診断を実施するとともに、診断結果に関する個別事例(省エネ改修方法、省エネルギー効果等)についてパンフレット等によって情報提供する。

・ESCO事業の創設

 建築物や工場における省エネ改修などのサービスをトータルに提供する新たな事業形態である「ESCO」(エナジー・サービス・カンパニー)の発展を支援するため、97年度からモデル契約書の作成やESCO事業を行う先進的な民間事業者に対して費用の一部を補助するモデル事業等を行う。

・省エネルギー型建築設備等への融資の拡充

 97年度から、省エネ性能の高い建築物への省エネルギー型建築設備の導入等に対し行っている日本開発銀行等による低利融資を拡充し、既存建築物の省エネ性能向上のための建築設備の更新・改修等も対象とする。

・既存ビルの省エネ改修モデル事業の実施

 業務用ビル等の省エネ改修を推進するため、開口部等熱損失の高い部分に省エネルギー性の高い部材・機器を使用した改修工事を行う場合、モデル事業として、その費用の補助を行う。

(ウ)共通対策

・建築物の運用管理の適正化による省エネルギー化

 97年度から、空調設備等の運用管理指針、運用管理計画の設定、エネルギー消費量等に関する定期報告徴収等による建築物の運用管理の適正化の推進に向けた検討を行う。

・官庁施設の省エネルギー化の推進

 官庁施設においては、96年度から行っている「環境負荷の少ない官庁施設の整備手法」の検討結果を技術基準類に反映すること等により、省エネルギーに配慮した施設整備の推進を図る。

 ウ.エネルギー消費機器対策

(ア)効率的機器の普及促進のための環境整備

・エネルギー多消費機器に対し消費者に分かりやすい省エネルギー表示の導入

 97年度中に、省エネ法に基づきエネルギー消費効率の表示を義務付けられている「特定機器」のうち家電製品について、相対表示の導入も含め、エネルギー消費効率の表示内容を分かりやすくするよう改善(省エネルギー表示制度の創設)するための検討を行い、98年度以降逐次実施する。

・エネルギー多消費機器の省エネルギー基準の追加設定等

 待機時消費電力の削減も含め、機器の一層のエネルギー使用効率化を促進するため、97年度中頃までに冷蔵庫を特定機器に追加指定し、製造者が最低満たすべき省エネルギー基準を設定するとともに、エネルギー消費効率の表示を義務付ける。

 また、このほかのエネルギー消費機器についても、特定機器の指定に向けて検討を進める。

・国際エネルギースタープログラム対象機器の追加等

 95年度から日米が、協力して実施している省エネルギーマーク表示についての国際エネルギースタープログラムの対象機器に、スキャナ及びマルチファンクション機を97年度中に新たに追加し、省エネ型機器の普及を図る。

 また、表示機器の普及促進を図るため、広報事業を強化する。

・エネルギー多消費機器の省エネルギー性能の公表等

 エネルギーを多消費する家電製品等のエネルギー消費効率を調査し、広く一般消費者に機器のエネルギー消費効率についての情報を提供する。

(イ)効率的機器の普及促進対策

・蓄熱式空調システムの普及促進

 空調の低負荷時におけるエネルギー消費効率向上により一定の省エネルギー効果が期待できる蓄熱式空調システムの普及を促進するため、実態に即した消費エネルギー量計算が可能となるよう省エネ法に基づく建築物の「省エネルギー計画書」作成のための省エネルギー計算プログラムの見直しを行うとともに、エネルギー利用効率化設備として位置づけ、技術紹介等を内容とする講習会の開催等による同システムの普及啓発活動を強化する。また、97年度から利子補給制度を拡充するとともに、高圧ガス保安法上の保安規制の合理化を図り、同システムの普及を促進する。

 さらに、公共建築物に関する基準類について、より効果的な蓄熱式空調システムの活用のために必要な改定を検討する。

・ガス冷暖房等の普及促進

 暖房も併せた場合のエネルギー消費効率が高いガス冷暖房機器の普及を進めるため、97年度から設置者への利子補給等の支援による普及促進策の充実を図る。また、ガス冷暖房、コージェネレーションシステムのメリットについて、省エネルギーに関する講習会において紹介する等、啓発普及・広報事業の充実を図る。

3.運輸分野

 (1) 基本的考え方

 運輸分野においては、これまでもガソリン自動車等交通機関単体のエネルギー消費効率の向上、公共交通機関の利用の促進、物流の効率化を進めてきたところであるが、自動車保有台数の増加、自家用乗用車の大型化等による自動車燃費の悪化、トラック輸送量の増加、配送の小口化・多頻度化による積載効率の低下等により、エネルギー消費は一貫して増加しているとともに、エネルギー消費原単位も近年悪化傾向にある。

 この分野における更なる省エネルギーのためには、自動車等交通機関単体の効率化、自動車交通の円滑化、旅客輸送における公共交通機関の利用、貨物輸送における大量輸送機関の利用等物流の効率化を進めることが必要である。

 (2) 具体的対策

 ア.交通機関単体のエネルギー消費効率の向上

・ディーゼル自動車の燃費基準の設定等

 排ガス規制等に配慮しつつ、ディーゼル自動車を特定機器に指定して、最低満たすべき燃費基準の設定と燃費表示の義務づけを行うことに関して97年4月から検討を開始し、乗用車等については遅くとも98年度中に結論を出すとともに、貨物自動車(重量車)については2000年度までに結論を出すことを目指す。また、エネルギー消費効率(燃費)の表示内容を分かりやすくするよう検討する。

・エネルギー消費効率の高い自動車の導入促進

 税制上の措置を活用することも含め、エネルギー消費効率の高い自動車の導入促進策について検討を行う。

 イ.交通対策

(ア)総合的な交通対策

・「都市圏交通円滑化総合計画」の策定・実施

 都市圏全体でトリップ(人や車の移動量又は手段)見直しに向けた具体的目標を定め、交通容量拡大策、交通需要マネジメント(TDM)施策、マルチモーダル施策を組み合わせて実施する「都市圏交通円滑化総合計画」を97年度から全国数都市圏において新たに策定、実施することにより、都市交通の円滑化を図る。

・交通需要マネジメント(TDM)施策の本格的実施

 総合渋滞対策支援モデル事業実施都市等を中心に、車の利用者の交通行動の変更を促し、都市又は地域レベルの交通流の円滑化を図るため、相乗りや時差通勤、駐車場の整備等によるパーク・アンド・ライドの実施等のTDM施策について本格的に実施する。また、HOV(多乗員車優先)の推進についても検討を進める。

・マルチモーダル施策の推進

 効率的な輸送体系を確立し、良好な交通環境の創造のため、自動車、鉄道、海運、航空等の複数の交通機関の連携による総合的な交通施策を推進し、利便性の向上、円滑化を図る。このため、97年度においては、交通拠点へのアクセス道路整備等に加え、関係省庁との連携の下に、路面電車の走行できる路面等の整備を図る路面電車走行空間改築事業を新たに実施する。また、鉄道駅と高速バスの結節強化のための具体的施策の検討を行う。

(イ)自動車交通円滑化、渋滞緩和

・渋滞対策プログラムの追加・見直しによる渋滞対策の推進

 全国的な渋滞対策プログラムの追加・見直しにより、一層の渋滞の解消、緩和を図る。

・高度道路交通システム(ITS)の推進

 渋滞・交通事故の低減や利用者の快適性の向上を目的に最先端の情報通信技術等を活用して創り出す新しい道路交通システムとして、渋滞情報等をリアルタイムに提供するVICS(道路交通情報通信システム)の全国展開、有料道路における自動料金収受システムの確立、交通管理の最適化を図るシステムの確立等ITSの導入を推進するとともに、ITSの導入を促進するための標準化等を進める。

・交通安全施設等の整備

 多数の道路が複雑に交差した都市部や幹線道路において、交通管制センターのコンピュータから信号機をコントロールする信号機の集中制御化、右折レーンの設置等による交差点改良や付加車線の設置等を行い、交通渋滞の緩和、交通の円滑化を図るための交通安全施設等の整備を推進する。

・違法駐車対策

 違法駐車に起因する交通渋滞を解消し、自動車の効率的なエネルギー消費を図るため、駐車場の整備、違法駐車の指導取締まりの強化、駐車対策のための各種システムの整備、違法駐車防止条例制定の働きかけを行っていく。

・自動車交通の円滑化のための道路の重点的整備

 高規格幹線道路、地域高規格道路、バイパス、環状道路など、速度向上に伴う燃費向上効果によって省エネルギー効果が高くなることが見込まれる道路を重点的に整備する。

(ウ)自動車の省エネルギー運転の推進

・自動車の省エネルギー運転の推進

 アイドリングストップ、適正速度での走行、無駄な荷物は積まない、タイヤの空気圧の適正化、高速道路での適正運転等の省エネルギー運転について普及啓発活動(エコドライブ推進)等を行う。また、短距離トリップ(移動)を徒歩、自転車へ転換する等自動車の使い方の見直しを行う。

(エ)公共交通機関の利用促進

・オムニバスタウン構想の推進

 バスを中心とした地域交通システムの構築に関する「オムニバス・タウン構想」を97年度に創設し、関係省庁等が連携して積極的に支援し、地域の交通状況の改善を図る。

・都市鉄道の整備、幹線鉄道の高速化等の推進

 都市鉄道の整備、幹線鉄道の高速化の推進により質の高い鉄道ネットワークを形成し、公共輸送機関の利用を促進する。

 ウ.物流対策

(ア)総合的な物流効率化対策

・総合物流施策大綱(仮称)の策定による物流効率化

 物流関連施策の総合的な推進に関する基本的な考え方、具体的な実施の手順等からなる総合的な物流効率化施策の推進に関する総合物流施策大綱(仮称)の策定を受けて、物流(都市内物流、都市間物流及び国際物流)について、関係省庁の連携の下で、インフラ整備、規制緩和、情報化・標準化等事業者の取組への支援等の措置を総合的に講じることにより、物流の効率化とこれによる物流分野のエネルギー消費効率の改善等を図る。

(イ)情報化の推進による物流の効率化

・高度道路交通システム(ITS)の推進

 ITSを推進することにより、トラック等商用車の運行管理を支援する。また、ITSを活用した共同配送・帰り荷情報の提供、自動受注、最適配車計画等の情報化の推進により長距離トラック輸送及び都市内・地域内トラック輸送の輸送効率の向上を図るため、97年度以降、モデルケースでの検討、システムの構築等を進める。

・物流効率化のためのEDI標準メッセージの拡充・普及促進等

 荷主と陸上運送事業者等との間の電子計算機の連携利用に関する指針(連携指針)を97年度に作成し、電子データ交換(EDI)の導入を進める。更に陸上輸送分野で利用されている物流EDI標準メッセージを倉庫分野や中小企業向けに拡充・普及していく他、ソフトウェアの開発を促していく。

(ウ)トラック輸送の効率化

・幹線共同運行、共同輸配送の促進

 幹線における共同運行や限定された都市内・地域内における共同輸配送を促進するため、事業者への働きかけを強化し、運行便数の削減、積載率の向上を図る。

・流通業務市街地の整備

 都市における流通機能の向上と道路交通の円滑化を図るため、流通業務市街地の整備を推進する。

・中小流通業者等の物流施設の整備のための支援の拡充

 97年度から効率的な流通業務施設等の設置の促進及びこれら施設を効率的に運営していくためのシステム開発の調査研究の推進等、中小企業者が行う物流効率化に向けた取組に対する支援を充実する。

(エ)海運、鉄道の活用によるモーダルシフトの推進

・鉄道貨物インフラ整備等

 主要幹線鉄道の貨物輸送力増強を図るため、コンテナ列車の編成の長大化に対応する所要のインフラ整備を図る。

・内航コンテナ船、内航RORO船等の整備

 モーダルシフトの受け皿である海運の輸送力増強を図るため、内航コンテナ船、内航RORO船等の整備を図るほか、これらの船種について98年度末までに船腹調整事業からの計画的解消等の取組を推進する。

・港湾インフラの整備

 96年度からの港湾整備五箇年計画に基づき国際海上コンテナターミナルの拠点的整備及び複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの整備を推進する。

(オ)道路ネットワークの整備

・物流拠点へのアクセス道路等の道路ネットワークの整備

 空港、港湾といった主要な物流拠点へのアクセスを強化する道路整備を推進する。また、97年度に、橋梁の補修・補強等により車両大型化(25トン車)に対応したルート(24,000km)を概成し、新たに需要の多い区間を重点的に引き続き延伸する。さらに、ISO規格海上コンテナ積載車両の通行については、欧米で一般的に用いられている車両の安全・円滑な通行を可能にするために要する費用と投資効果を十分勘案した上で、道路の高さに関する設計基準を見直すことも含めて97年度から検討を行う。

・広域物流拠点関連道路等の整備

 高規格幹線道路等のインターチェンジ周辺に、貨物車の積替え基地として広域物流拠点の立地を図るため、関連道路、拠点内道路等の重点整備を行い、道路と広域物流拠点との一体的整備を推進する。また、荷捌きのための路上停車施設の設置等により、貨物車等の路上駐車の削減による都市内物流の効率化を図る。

・国際交流インフラ推進事業の創設

 国際港湾・空港、高規格幹線道路等の道路ネットワーク、情報通信インフラ等の重点的・計画的な整備により、国際交流の促進や広域的な連携、地域活性化のための地域の取組を支援する。

4.横断的対策等

 (1) 基本的考え方

 上述の部門別の対策に加え、横断的対策として、省エネルギーの必要性等に関する啓発や教育の充実、都市構造の省エネルギー化、ライフスタイルの変革、地方における取組を進めることが必要である。

 (2) 具体的対策

 ア.普及・広報

・夏季・冬季の省エネルギー広報の強化、拡充

 一年のうちエネルギー消費の増大する夏と冬に、国民の省エネルギーに対する意識の一層の高揚を図り、具体的な省エネルギーの取組を促すため、政府広報を始めとして新聞・雑誌・テレビ等を活用した広報を強化するとともに、業界団体等を通じた協力の呼びかけを強化する等政府を挙げて広報・普及活動の強化、拡充を図る。

・一般消費者を対象とした省エネルギー優秀事例の表彰の実施

 97年度から、広く国民の省エネルギー推進意識の向上を図るため、各家庭、一般消費者のグループ(職場、町内会等)で実施している省エネルギー事例について全国規模のコンクール方式で募集、優秀事例を表彰し、併せてその内容、効果についての具体的事例集の配布等を行う。

・ライフスタイルの省エネルギー化の普及の推進

 ライフスタイルの省エネルギー化に関する国民的理解を求めるため、啓発のためのキャンペーン等を行う。

・環境家計簿の普及の推進

 家庭におけるエネルギー消費の自己評価により省エネルギーを促すため、各地の自治体や団体と連携しつつ、環境家計簿運動への取組を促進する。

・サマータイムに関する広報の推進

 サマータイム制度に係る国民各層における十分な議論に資するため、サマータイム制度に関する広報活動を推進する。

 イ.教育

・学校教育における省エネルギーに関する教育の充実

 児童生徒が省エネルギーを含む資源・エネルギー問題について理解を深めることは極めて重要であり、学校教育においては、従来から、児童生徒の発達段階に応じて、社会科や理科を中心に指導しているところであるが、今後とも、各学校において資源・エネルギーに関する教育の充実を図るとともに、担当教員講習会などにより環境教育についての教員の指導力の向上を図る。

・環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進

 省エネルギーを始めとする環境への負荷の低減に対応した学校施設づくりの観点から、エネルギー・環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備の具体的な推進と実証的な検討を行うため、97年度からパイロット・モデル事業を実施し、児童生徒のエネルギー・環境教育に資するとともに今後の学校施設の整備充実を一層促進する。

 ウ.地域における取組等

・地方公共団体による省エネルギー活動の推進

 97年度から、地方公共団体による先進的な省エネルギーの取組を促進するための補助制度を創設する。

・地方公共団体による地球温暖化対策の推進

 地方公共団体が行う地球温暖化対策を目的とした事業のうち、

 1)二酸化炭素等の温室効果ガスの排出抑制・削減に効果が優れ、他への波及効果が高い対策

 2)地域で取り組む地球温暖化対策についての計画を策定する事業に関して、その促進を図る補助制度を97年度に創設する。

・次世代都市整備事業の推進

 省エネルギー、環境等に関連する技術のうち、都市及び都市システムに関連する技術を複合・統合化し、パイロット事業として現実の都市への適用を先導的に行い、次世代の都市システムとして社会的定着を図ることにより、新たな都市像・都市生活像を示す。

・情報化によるテレワークの推進

 交通代替を通じた省エネルギーに資するため、モデル事業の実施等により、情報通信を活用したテレワーク等の在宅勤務やサテライトオフィスでの勤務の一層の推進を図る。

・「国の事業者・消費者としての環境保全に向けた取組の率先実行のための行動計画」(率先実行計画)の推進

 率先実行計画に規定するエネルギー利用の節約目標の達成に向け、国の各行政機関が積極的に省エネルギーに関する取組を推進する。このため、97年から、「物品等の調達に係る推奨リスト」の検討や「職員が業務に用いる共用自転車の導入の可能性について」の検討を進める。


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