平成9年4月1日
総合エネルギー対策推進閣僚会議
近年、エネルギー価格の低位安定、国民生活のゆとりと豊かさの追求を背景としたライフスタイルの変化等により、我が国の最終エネルギー消費は各部門とも引き続き増加傾向にあるとともに、民生部門、運輸部門を中心に高い伸び率を示している。また、我が国は、73年の第1次石油危機以降、産業部門を中心にエネルギーの利用効率化を進め、世界的にも最高水準を達成しているものの、95年度までの最終エネルギー消費の対GDP原単位が4年連続で悪化するなど、省エネルギーの停滞が顕著になってきている。
一方、地球温暖化問題への対応については、長期エネルギー需給見通し(94年9月、総合エネルギー対策推進閣僚会議了承)にあるように、地球温暖化防止行動計画(90年10月、地球環境保全に関する関係閣僚会議決定)に掲げられた二酸化炭素排出抑制目標を達成していくうえで、省エネルギーの推進は不可欠となっている。しかしながら、我が国の最終エネルギー消費は、92、93年度は1%未満の低い伸びにとどまったものの、94年度以降年率3%以上の高い伸びを示しており、95年度には、既に長期エネルギー需給見通しの2000年度の水準に到達した。こうした状況は、同計画の二酸化炭素排出量に関する目標の達成に危惧を生ぜしめており、我が国としては、2000年に向け省エネルギーの推進に対する最大限の努力が求められている。
このため、政府としては、これまで講じてきた施策に加え、産業・民生・運輸すべての分野にわたり省エネルギー対策の一層強力な推進を図るべく、以下に掲げる施策に積極的に取り組むこととする。また、2000年に向けて、毎年、我が国のエネルギー需給をめぐる状況等を踏まえつつ、本対策の適切なフォローアップを行うこととする。
なお、省エネルギーが真に実効を挙げるためには、政府による取組のみならず、ライフスタイルの見直しも含めた国民一人一人の一層の取組が不可欠である。今回の総合的な省エネルギー対策の取りまとめを契機として、国民一人一人の自発的な努力を促すよう政府としても国民に対する働きかけを今後一層強化することが必要である。
また、こうした我が国の努力は、他国にも一層の省エネルギーへの取組を促す観点から、国際的にもアピールしていく必要がある。
産業分野においては、これまで省エネルギー設備投資の推進、エネルギー管理の適正化等により、大幅な省エネルギーを進め、世界的にも最高水準を達成しているものの、エネルギー価格の低位安定傾向が続く中、省エネルギー投資の経済性の悪化していることや、高付加価値化の追求等から、91年度以降はIIP(鉱工業生産指数)当たりのエネルギー消費原単位はむしろ悪化傾向にある。
この分野における更なる省エネルギーのためには、今後一層、エネルギー管理の強化、省エネルギーに資する技術、設備の導入等を進めることが必要である。
民生分野においては、これまでも建築物の省エネルギー化、家電製品等のエネルギー消費機器の効率化等を進めてきたが、世帯数や建築床面積の増加、電化製品の普及、大型化等によりエネルギー消費は一貫して増加してきている。家庭分野における一世帯当たりのエネルギー消費原単位も一貫して悪化傾向にあるとともに、業務分野における床面積当たりのエネルギー消費原単位も80年代後半以降悪化傾向を示している。
この分野における更なる省エネルギーのためには、新築建築物の省エネルギー化を進めるとともに、大宗を占める既存建築物の省エネルギー改修を進めることが必要である。また、建築物の空調設備等の運転管理の適正化、エネルギー消費機器の効率化及び効率的なエネルギー消費機器の選択、適切な利用を進めることが必要である。
運輸分野においては、これまでもガソリン自動車等交通機関単体のエネルギー消費効率の向上、公共交通機関の利用の促進、物流の効率化を進めてきたところであるが、自動車保有台数の増加、自家用乗用車の大型化等による自動車燃費の悪化、トラック輸送量の増加、配送の小口化・多頻度化による積載効率の低下等により、エネルギー消費は一貫して増加しているとともに、エネルギー消費原単位も近年悪化傾向にある。
この分野における更なる省エネルギーのためには、自動車等交通機関単体の効率化、自動車交通の円滑化、旅客輸送における公共交通機関の利用、貨物輸送における大量輸送機関の利用等物流の効率化を進めることが必要である。
・ディーゼル自動車の燃費基準の設定等
(ア)総合的な交通対策
(ア)総合的な物流効率化対策
上述の部門別の対策に加え、横断的対策として、省エネルギーの必要性等に関する啓発や教育の充実、都市構造の省エネルギー化、ライフスタイルの変革、地方における取組を進めることが必要である。
・夏季・冬季の省エネルギー広報の強化、拡充
・学校教育における省エネルギーに関する教育の充実
・地方公共団体による省エネルギー活動の推進