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ボイラ給水タンク水温上昇維持効果による燃料燃焼量の削減

  財団法人竹田綜合病院
総務部ハウスキーピング科
ボイラ運転管理グループ
◎ キーワード: 燃料の燃焼の合理化
◎ テーマ概要
  当院ボイラの給水タンクは水道水を単純軟化器にて処理し補給、回収ドレン水、補助加熱蒸気を投入し60℃程度でボイラ給水にする当初の設定は、運転記録や状況調査の結果、タンク中上層部の温度に比べ20〜30℃も低温のままボイラ給水されていた。タンク本体の構造、循環口、補給水口、取水口等の位置関係及び各水温状況から排水口を利用した簡単な改造によりボイラ給水温度上昇が可能と考え着手。特に冬季の水道水は低温となる為、暖房時期の高温ドレン水を有効に活用する事でボイラ燃焼量の削減に大きな効果をもたらした。
 
◎ 当該事例の実施期間 平成14年2月〜平成17年3月 延べ37ヶ月
  ・企画立案期間 平成14年2月〜平成14年6月 延べ 5ヶ月
  ・対策実施期間 平成14年4月〜平成15年10月 延べ19ヶ月
  ・効果測定期間 平成16年4月〜平成17年3月 延べ12ヶ月
 
◎ 事業所の概要
  ○医療(綜合病院)
   ・地域医療支援病院 ・地域周産期母子医療センター ・地域リハビリテーション広域支援センター
   ・厚生労働省臨床研修指定病院  ・日本医療機能評価機構認定(第23号)  
○許可病床数  1,097床    ○従業員数    1,292名
○エネルギー使用量 平成16年度(原油換算) 3,744KL
(内訳 ・ 熱 2,031KL  電気 6,738千KWH)
 
◎ 対象設備の概要
図-1(対象設備概略)
図-1(対象設備概略)
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1. テーマ選定理由
  医療の現場においては省エネを推進するには多くの問題がある。施設の機能が停止した場合、患者の生命を預かる医療現場への影響は大きくなかなか行動に移れないのが現状である。蒸気を作る立場から、安全に効率良く蒸気を作り供給する事がボイラを取り扱う者の使命であり、今回のテーマは、ドレン回収や補助加熱蒸気により給水タンクに取り込んだ熱が利用されず放熱していたのを簡単な改善策によりボイラ給水へ利用する為取り組んだ。効率良く蒸気を作るには最良のテーマと考える。
 
2. 現状の把握および分析
 
2-1 現状把握
  当院の給水タンクは水道水を単純軟化処理し補給する。各設備で使用した蒸気ドレンの約66%を回収。他に補助加熱蒸気を循環水に投入し高温水としてを取り込んでいる。貯水能力26tのタンクに5t/回の補給水を行ない19tで補給停止する。冬季の水道水温度は最低4℃にも低下する事からボイラ給水温度は低い状態が続いていたが、上部水位は高温を維持していた。この高温水をボイラ給水に利用すれば燃料削減が可能。更に給水温度が上昇安定維持出来れば薬品注入量を減らし、これにより缶水濃縮上昇率を抑え缶水ブロー低減による廃熱量削減が出来る。
 
2-2 現状分析
●低温の補給水は上部から単純な投げ込み投入の為急速に降下し底部に滞留する

●循環水取出し位置はボイラ給水口より上位の為低温水が先にボイラ給水となり全体水位が下がらないと高温水がボイラ給水口に至らない

●水量が減り高温水がボイラ給水位になった頃再度補給水投入となり低温水が降下滞留しボイラ給水となることの繰り返しであった

●高温水となるドレン水および加熱循環水は上部投入のため上層部に滞留し下層部ボイラ給水への熱利用効果は少なかった

●裸のタンクは大量放熱している

●26tの貯水能力が生かされていない

・14t〜19tでON-OFF制御していたということは、60℃14tの保有水量に4℃5tの補給水となり低温水は急速降下し底部滞留し低温給水となる。完全に攪拌された場合で(60℃×14,000+4℃×5,000)÷19000≒45℃となる。攪拌効果が悪いためボイラ給水温度は40℃を下回る状況から低温水の底部滞留し易い状況と推測出来る。
図-2(保有水量変更)
図-2(保有水量変更)
 
3. 活動の経過
  3-1 取り組み体制
図-3(組織図)
図-3(組織図)
 
3-2 目標設定 (図-2参照)
 
現状の制御では(60℃×14,000)+(4℃×5,000)÷19,000≒45℃
となり制御水量を調整し貯水能力を最大限生かした場合
(60℃×19,500)+(4℃×3,500)÷23,000≒51℃は6℃上昇出来る

保温及び循環攪拌効果の上昇分を加え10℃の給水温度上昇を目標とする。
※10℃上昇による薬品注入量は約15%削減可能。
 
3-3 問題点とその検討

・常時医療現場の要求に対応出来る様24時間作業による機能停止は出来ない
・SUS製タンクだが長期使用により構造をかえる加工は出来ない
(溶接等は不可、位置関係から電極棒の抜き取りも出来ない)
・最下部排水口から入水する場合タンクの沈殿物を巻上ボイラへ持ち込まれる
(ボイラ及び薬品メーカーに十分対応処理できる事を確認)
・補助加熱蒸気量は増やさない(20A・0.2MPaは変えない)
・省エネ効果追及により安全管理を損なう事は避ける
・予算化してない為、資材費及び工事費は最小限とする
(全て自家工事、資材も在庫品等を有効に利用した為150,000程度の経費で済む)
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4. 対策内容
  [1] 高温保有水量を増やし、1回の補給量は減らし全体の水温低下の緩和を図る
 
※1.5t〜2t/回ドレン回収量がある為オーバーブローを避ける必要から23tが最大の制御量とし変更する。

給水タンクの最も効果的な保有量を23t、補給量を3.5t/回とした場合
改善前(60℃×14,000+4℃×5,000)÷19,000≒45℃となり、改善後は
(60℃×19,500+4℃×3,500)÷23,000≒51℃により計算上約6℃の改善効果が見込まれる。

[2] 放熱量を減らす
裸状のタンクを保温する(タンク全面にに10mmエチレンシート 0.031w/m2k を貼り付ける)

[3] 低温水補給による下降速度、下部水温急降下、底部滞留の緩和を図る
補給水を散水投入出来る部品(図-4)を挿入(天板、空間部本体にも補給水をあて本体の熱を一部吸収させた上分散投入する)
図-4(補給水投入改善図)
図-4(補給水投入改善図)

[4] 水温性質を利用したタンク内循環改善による攪拌効果を図る 図-5参照
(高温水を下部投入とし上昇作用による循環攪拌効果を生かす)

・循環Pによる循環水の一部をタンク最下部の排水口を利用し投入する、この時補助加熱蒸気を加え高温水とする(大半は取水時温度のまま上部投入させる為低温水時は上層部からの下降作用となる)

・高温ドレン水を下部ボイラ給水口位の予備口より投入する
図-5 加熱循環水取り入れ変更図の説明(今回の最重点と考える)
・循Pによる循環水の一部を蒸気加熱し以前よりも高温としてタンク最下部の排水口を利用し投入する
・サイズ20A 0.2MPaの補助加熱蒸気をレンコン型サイレンサーを利用し50A循環用配管チーズ中央部へ加工設置
・ボイラ給水口位に温度センサーを取り付け60℃で電磁弁を閉鎖蒸気停止する
・排水バルブへ3方コックLポートを取り付けFJにて簡単に接続する
・排水はハンドル切り替えにより行なう
図-5(改善詳細図)
図-5(改善詳細図)
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5. 対策後の効果
グラフ-1 月別水温(℃)
グラフ-1 月別水温(℃)
 
○H16年度給水温度は改善前平均を予想通り上回る
○ドレン水温度も給水温度を上回る為、下部取り込みは有効と判断出来る
表-1 集計年度比較(給水、燃料等)
表-1 集計年度比較(給水、燃料等)
 
・ボイラは各ボイラ、各月毎集計し、時期のにより使用量に大きな差があり平均水温は補正した数値となっている
・ボイラ効率 H16年度・86%  年平均は80%となっている
・燃料(A重油)は 低発熱量 42.5MJ 平均比重 0.86 とする
・H14年度、H15年度は改善途中の為参考値とする
 
グラフ-1 表-1より
◎ ボイラ燃焼量・給水量の変移状況
平成11(燃料 1,890KL 水 22,229t) 蒸発量 19,838t 11.8倍
改善前(燃料 1,992KL 水 23,773t) 蒸発量 21,314t 10.7倍(H9〜13年平均)
改善後(燃料 1,760KL 水 22,228t) 蒸発量 21,189t 12.0倍(H16年度)
○ 平成11年度と平成16年度を比較すると給水量は同量だが燃焼量に差が有効果が一目で分る

○ 平成16年度の給水温度は改善前年平均を約12℃上回った

I 給水量22,228t 低発熱量42.5MJ 比重0.86 単価43円/L ボイラ効率86%
(12×4.18605×22,228)÷(42.5×0.86×0.86)≒35.5KL燃料削減となる。(1,530千円相当)

○ 給水温度12℃上昇による薬品注入量削減から缶水電気伝導率の上昇率を抑制出来、缶水ブロー管理基準を徹底した事により缶水ブロー率は4.6%まで低減できた。

II ボイラ薬品は52ppm、1,156kg削減出来る。実際は2社の薬品のため(A社)602kg、217千円、(N社)130kg、130千円、計347千円の削減となった。

III 缶水ブロー率は5.7%削減となり、廃熱量の削減分は缶底ブロー基準により0.5MPa時の熱量2745で算出すると(22,228×0.054×2747)÷(42.5×0.86×0.86)≒ 105KLとなる。(4,511千円相当)。

○ I+IIIにより140.5KL/年の燃料削減となる。
○ I+II+IIIにより6,389千円/年の経費削減となる。(単価により変動する)
グラフ-2(年間削減量) テーマ削減率
燃料・・・60.6%
経費・・・61.9%

その他の省エネ
・ボイラ空燃比調整
・暖房設定見直し
(蒸気圧力・温水温度)
・ボイラ運転スケジュール変更等
グラフ-2(年間削減量)
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6. まとめ
  ○ H16年度 232KL/年の燃料削減(9,976千円)  前年比97.3%  平均比88.4%
○ 改善テーマによる燃料燃焼量削減効果 140.5KL(6,041千円)  60.6%
○ 12℃の給水温度上昇(ボイラ給水温度55〜65℃維持)
○ 下層部水温が上層部水温を上回る状況・・・高温ドレン水下部取り入れ効果
○ タンク周囲気温40℃以下(10℃以上下がった・・・保温による放熱量低減)
○ 補給水直後の下層部の水温低下幅も改善された・・・低温水底部滞留緩和
○ 加熱蒸気停止、蒸気使用量削減・・・高温水下部取り入れ攪拌効果(底部水温上昇)
  ○ 薬品削減量 732kg/年(347千円相当)
○ 缶水ブロー率 4.6%(5.7%削減) 105KL削減
○ 缶内状況は新たな腐食や腐食の進行は無い事から管理における効果確認

今回は、イメージ通りの改善が出来、予測以上の効果と判断する。又、今年のボイラは開缶検査時内部状況を見たところ水管理安定により缶内状況は今迄で最も良い状況である。以前は缶内に腐食が見られ、時には修理加工を要する状況であった。付属品を固定するボルト等はネジ山がなくなり取り外し時は切断していたが今年は新品と変わらない状況からボルトを再利用するほど安定した状況に安全管理への効果も大きなものと判断できる。小さな改善テーマから給水管理、薬品管理、缶水管理の強化にも発展し、省エネルギーと安全管理の相乗効果が予想を上回る成果を生んだものと考えます。
 
6. 今後の計画
今回の省エネ効果は我々が取り扱う規模から見て大きいかそれ程ではないのかは判断出来ないが確実に前進したと確信するところですが、対策実現に長く掛かった事は残念に思う。今回は蒸気を作るところでの省エネに取り組んだが、現在は蒸気輸送の中で重要な保温とスチームトラップの省エネを展開中。
我々が担当する蒸気設備の大半は、機械室、床下、天井内、PS等一般の人には目に付かない所に配置されている。3基のボイラ、26基の圧力容器をはじめ、暖房器、スチームトラップ、蒸気配管の設備は、数百個、数Kmの長さにも及ぶ規模である。医療現場では、各設備はSW1つで常時使えるのが当たり前と思っているスタッフが少なくない。設備にトラブルや使用制限する様な事があれば大変である。蒸気の場合見た目に異常が無くとも放熱ロスは常時起きている。漏洩は危険を伴うえエネルギーロスは大きく経費に直結する。目に見えない場所の異常を如何に早く発見、対処し正常に戻すかがポイントとなり課題である。大きな投資による動きも重要だが、小さな異常を見逃し放置する事は常に危険と放熱を増やし続け経費を浪費する事となる。ボイラを取り扱いエネルギーを管理する者として、安全に効率良く無駄の無い管理を追及する事が自分に与えられた使命と受け止め挑戦して行きたい。今、原油価格高騰から石油製品価格も影響を受けエネルギーに掛かる経費は日々増え続けており、管理の重要性を認識し省エネルギー活動に取り組みたいと考えております。
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