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クリーンルーム空調エネルギー削減

  ソニーセミコンダクタ九州株式会社(略称:SCK)
長崎テクノロジーセンター(略称:長崎TEC)
ファシリティ部門 長崎ファシリティ部
NPファシリティ管理課
◎ キーワード: 廃熱の回収利用
加熱・冷却・伝熱の合理化(空気調和設備、給湯設備等)
◎ テーマの概要
   半導体のクリーンルームでは、数多くの半導体生産設備が設置されており、大量のエネルギーを消費している。消費されたエネルギーは熱負荷となり空調システムに大きな負担を強いている。また、半導体のクリーンルームはその製品の特性上高精度な温湿度環境を要求しており、それらを制御するための冷温熱源も含めるとそのエネルギーは膨大と言える。今回クリーンルームで発生した熱負荷をヒートポンプにより回収し、空調の熱源として再利用するシステムを構築することでクリーンルームで使用される空調エネルギーを大幅に改善した。
 
◎ 当該事例に対する実施期間 平成15年 4月〜平成17年 1月
  ・企画立案の期間 平成15年 4月〜平成16年11月 延べ20ヶ月
  ・対策の実施期間 平成15年12月〜平成17年 1月 延べ13ヶ月
  ・対策効果確認期間 平成16年 2月〜平成17年 3月 延べ13ヶ月
 
◎ 事業所の概要
  生産品目      半導体素子(MOS、BIP)
  従業員        3,700名(第2事業所及び派遣・請負含む) 
  エネルギー年間使用量(16年度実績)
          灯油  1,625kL(原油換算量)
        電力  146,406千kWh
 
◎ 対象設傭の工程
  当事業所内NP3メインクリーンルーム及びNP3用冷熱源設備が対象
図-1 対象工程の事業所内配置図 
図-1 対象工程の事業所内配置図
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1. テーマ選定の理由
  ソニーは、『あらゆる生命の生存基盤である地球環境が保全され、現在だけでなく将来の世代にわたり、人々が健全で幸せな生活ができ、夢を持ち続けられるような持続可能な社会の実現を目指した環境ビジョン』を2000年に制定。翌2001年には2005年までの環境中期目標を制定した。SCKは「輝きを継続し信頼される会社であり続ケる」という経営理念の元、環境面では「地域発展と環境向上に貢献する」事を目指し、エネルギーを使用する際に発生するCO2の低減に注力した中長期目標を定め実現に取組んでいる。
このような背景の中、長崎TECでは、これまでインバーターや高効率機器の導入、設備の統廃合などの省エネを推進してきたが、その内容はこれまでの標準的な手法の繰り返しであり、このままでは限界となっていた。環境中期目標の達成の為にも更なる省エネ施策が必要で、従来とは視点を変えた廃熱を回収、有効利用を目的とした本テーマを立案・選定した。
 
2. 現状の把握および分析
  2-1 現状の把握
  2-1-1 エネルギーの使用比率
  当事業所が使用しているエネルギーは製造工程が32%、ユーティリティ工程が58%で全体の90%を占めている。更にユーティリティ工程では冷熱源である冷凍機設備で使用されるエネルギーがその44%を占めている。また燃料である灯油はその99%をボイラーで使用しており、蒸気、温水の温熱源となっている。
表-1 エネルギーの使用比率 
表-1 エネルギーの使用比率
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  2-1-2
  熱源・空調システム
  冷熱源、温熱源はともに生産ラインのクリーンルーム空調に不可欠な設備である。
ターボ冷凍機で製造された冷水は、外気の除湿(夏季)、外気からの侵入熱を含むクリーンルーム内熱負荷の冷却(通年)に使用。
ボイラーで製造された蒸気は、直接外気の加湿(冬季)に使用すると共に、熱交換器にて温水へ変換され外気の除湿後の再熱及び蒸気加湿を行う際の予熱として使用している。
図-2 熱源・空調システム
図-2 熱源・空調システム
 
2-2 現状の分析
  対象クリーンルーム空調システムで使用される冷熱源、温熱源の量を分析すると下表のように纏められる。
電力は当事業所冷凍機設備の約24%、燃料はボイラーの約48%が対象設備のエネルギー使用量となっている。
表-2 対象空調設備におけるエネルギー使用量
表-2 対象空調設備におけるエネルギー使用量
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3. 活動の経過
  3-1 取組み体制
 

当事業所環境委員会の推進組織であるファシリティ職場推進委員会で推進。
ファシリティ職場推進委員会は、事業所内の熱源や空調設備を含むユーティリティ設備の管理、運用する部署の委員会である。本テーマは対象設備を管理管轄するNPファシリティ管理課の事業計画として立案・実行した。

図-3 取組み体制
図-3 取組み体制
 
3-2 目標の設定
  当事業所における環境中期目標達成に向けて既にインバーターターボ冷凍機導入などの施策が計画されていたが、目標達成には不十分で追加施策が必要であった。目標に対し不足しているCO2排出量3,652t-CO2を本テーマの目標とした。3,652t-CO2を電力及び燃料で削減する場合において、それぞれの量の関係は図-5で示され、電力のみの場合9,661千kWh,燃料のみの場合1,455KLが目標となる。
図-4 目標
図-4 目標

図-5 目標における電力及び燃料量
図-5 目標における電力及び燃料量
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  3-3 問題点とその検討
 

3-3-1 問題点

  現在運転しているクリーンルームの空調には温熱源、冷熱源を供給しておりそれぞれ相当のエネルギーを使用している。そのシステムには更に改善すべき以下の課題があると考えられた。
  [1] クリーンルーム内にある大量の熱負荷は冷凍機により冷却され、最終的に大気へ放出している。
  [2] 加湿には蒸気を使用している為、高い熱エネルギーが要求されている。
  [3] 蒸気加湿後の給気ダクト内での蒸気の凝縮を防止する為、給気温度を一定以上に保つ(再熱)必要があり、効率の良いシステムとは言えない。
 


3-3-2 検討内容

  上記課題に対し検討の結果下記の対策を立案した。
  [1] ヒートポンプ式ターボ冷凍機を導入し、クリーンルーム内の熱エネルギーを温水として回収する。
  [2] 外調機の加湿方式を蒸気式から温水による加湿が可能な気化式へ変更し、ヒートポンプ式ターボ冷凍機で回収した温水を利用する。
  [3] 気化式加湿は蒸気式加湿に比べ給気温度を低く出来る為、クリーンルームの冷却用冷熱源として活用する。
  これらによりクリーンルームの空調に対するエネルギー効率を大幅に向上出来ると考えた。
図-6 現システムのおける空気線図
図-6 現システムのおける空気線図

図-7 施策実施後の空気線図
図-7 施策実施後の空気線図
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4. 対策の内容
  4-1 システムの系統図と説明
  クリーンルーム内の熱負荷をドライコイルで冷却回収する。これをヒートポンプ式ターボ冷凍機で40℃の温水へ変換する。
出来た温水は、温水往ヘッダーを通じ蒸気・水熱熱交換器へ導かれる。熱交換器での出口温度設定は40℃としており、40℃の温水が回収出来ている場合は蒸気の使用量が0となる。
外調機に温水を導入し気化式加湿器により加湿する。
加湿後の給気温度はクリーンルーム内露点と同一の為、クリーンルームの設定温度に対し十分に低いことから冷却冷熱源として作用させる。
図-8 施策後の空調システム
図-8 施策後の空調システム
 
4-2 ヒートポンプターボ冷凍機の容量選定
  現存する温水負荷と気化式加湿に必要な温水を加算して熱回収量6,125MJ/h、冷凍能力400RTを選定し、既存冷専500RTターボ冷凍機を更新(入れ替え)した。
図-9 既存温水負荷及び気化式加湿予測負荷
図-9 既存温水負荷及び気化式加湿予測負荷

図-10 冷凍機群設置状況
図-10 冷凍機群設置状況
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5. 施策後の効果(省エネルギー金額、省エネルギー率、省エネルギー量、原単位等)
  5-1 施策後のボイラー燃料使用量変化
  図-10は、外気露点温度によるボイラー燃料使用量の比較データであるが、施策前後では明らかにボイラー使用燃料が減少。施策後のボイラー燃料は、対象外の空調用加湿及び純水製造工程で必要とされている蒸気分である。
図-11 ボイラー燃料使用量変化
図-11 ボイラー燃料使用量変化
 
5-2 対象設備のエネルギー使用量変化
 

表-3は施策前後の対象設備のエネルギー使用量の比較であるが、電力は約22%削減、燃料は100%の削減となる。

表-3 施策前後のエネルギー使用量比較
表-3 施策前後のエネルギー使用量比較
 
5-3 目標に対する達成度
  気化式加湿器の加湿水源に純水を使用したことによる、純水設備でのエネルギー使用量の悪化が多少あるものの、更にボイラー負荷削減によりボイラー2缶を休缶した効果も含み目標のCO2削減量に対し111%と達成することが出来た。
表-4 省エネ及びコスト削減効果
表-4 省エネ及びコスト削減効果
 
6. まとめ
  今回のヒートポンプターボ冷凍機、気化式加湿器の導入による省エネ効果は、それ自体大きな成果と言える。しかし、それは直接的な効果に留まらず、ボイラー負荷の大幅削減は、当事業所内にあるボイラーを2缶休缶することに繋がり、ボイラーの休缶によるボイラー室の給気ファン、その他補機のエネルギー削減、ボイラーに関わる維持管理費削減と連鎖的な効果を生み出した。それらを総合した投資効果は単純投資回収1.84年と十分に回収可能な範囲である。
また、当事業所は平成13年度時点で第1種熱管理指定工場であったが、本テーマによる燃料削減及び、それまでの省エネ活動により平成17年度は第2種指定工場以下の燃料使用量を見込める程となった。
図-12 原油換算燃料使用量推移
図-12 原油換算燃料使用量推移
 
7. 今後の計画
  今回の施策はエネルギーの循環利用の典型とも言える例であり、様々な展開の可能性を持っている。
事業所内類似設備への水平展開、純水製造施設で必要とされる高温熱源への廃熱の利用検討、更に夏季に効果が出る省エネ施策の模索を行い、あらゆるエネルギーの回収、循環利用を追求し高効率な半導体工場を構築したいと考えている。
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