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工場非稼動時電力の更なる低減活動

  トヨタ自動車(株)
田原工場工務部 PEG

◎ キーワード: 非稼動時電力
◎ テーマの概要
   工場非可動時である工場休日の夜間は、工場内が保全要員を除き、ほぼ無人になり、保安用設備以外は原則、運転停止状態となるが、常に電気は供給されておりわずかながらであるが消費されてしまう。この消費電力は、設備1台当たりではわずかで無視できる電力であるが、各工程単位、工場全体を絶対値で見ると、かなり大きな数字となり無視できない。今般、保安用使用設備の実態を改めて解析.調査し徹底的な非稼動時電力の低減を行った。
 
◎ 当該事例に対する実施期間 平成14年〜平成16年現在
  ・企画の立案
・対策の実施
・対策の効果確認 
平成14年4月〜5月、平成15年8月〜11月
平成15年12月〜16年5月
平成16年6月〜8月
 
◎ 事業所の概要
  ・生産品目 自動車(セルシオ、アリスト、プラド、4ランナー、RAV4、イプサム)及びエンジン
・従業員 8,600名
  ・エネルギー年間使用量(H15年度実績)
  電気 451,078Mwh
重油 38,751KL
ガス 13,603Ton
 
◎ 対象設備の工程
・変電所フィーダー数 常用系97、自家発系14  
・工場建屋数 12棟、サブ変台数70、サブ変台トランス数306台
 
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1. テーマ選定のねらい
 田原工場においてこれまで行ってきた省エネ活動は、生産ラインでは
1] 設備への省エネ技術の導入
2] 生産ラインの集約(寄せ止め)エネルギーの効率化
3] 新設ラインでの工程短縮によるエネルギー消費の効率化
などである。
 エネルギー供給部門では
1] 排熱回収方法の改善
2] コジェネ発電廃熱の有効利用による蒸気供給の効率化
3] 工場空調最適運転制御化
などを実施して来ている。
 これまでの成果はCO2(C換算)で'03年度実績で年間1,800トンの省エネ効果を生みだし、その結果工場としてのエネルギー絶対値は166,852KL(原油換算)と'00年レベルの91.4%を達成している。これらの活動は、何れも、対処療法的な活動として、展開してきた。
 今般、今一度、非稼動時の電力は[ゼロ]であるとの理想を追求する為、原点に返り、工場の稼動時と非稼動時の電力を確認して見ると、図1のような状況で、稼動時に対する非稼動時間での電力使用量の比率は平日が39%、休日12%で、全く生産をしていない休日でも稼動時に対し、大きな比率で、電力消費があることがわかった。休日非稼動時電力比率がゼロになれば時間当たり約12,570kwhの電気の浪費が削減できる事になり、当工場で年間142日ある、休日夜間のみ[ゼロ]になったと仮定しても、年間14,279,520kwhの電力量低減となる。
 そこで、何故非稼動時でも12%もの電気を使っているのか工場をあげて調査し、止める事ができるものは完全に止める活動を行う事にした。尚、休日非稼動時の電力量低減効果を、平日稼動日夜間の工場非稼動時間での電力低減にも繋げて行く事とし、まず休日非稼動時から着手する事とした。
図1 電力使用状況
 
2. 現状の把握及び分析
   今回のターゲットである休日の使用電力に焦点を当てて社内の他工場と比較調査した所、工程別では図2、図3のような消費状況で、特に機械工場、成形工場,鋳造工場、塗装工場が電力の絶対値及び対稼動時比率とも多い状況だった。
図2 休日使用電力絶対値
図3 休日使用電力稼動時比率
次に各工程の休日(土曜の夜間22:00〜6:00)電力が何に消費されているか調査した。
表1 休日電力消費内容
 これを内訳とし整理、纏めると、非稼動時電力の消費量に占める割合は
1] 非稼動中であっても防災上、生産設備の維持トラブル防止上、止められない設備 (鋳造保持炉、塗料温調、警報設備(火災、ガス漏れ等) 32%
2] 基本的には止められるが止める工数が膨大で実施的に止めれない設備 59%
3] 受変電設備のロス 9%
であることが分かった。
 このうち3]は別に計画を立て対策をする事とし、1]2]の止めれない設備に絞り対策を検討した。尚、2]については、工場内省エネ活動の中で、啓蒙活動を改めて、展開する事とした。
 以上を整理すると、1]の理論的に必要な休日非稼動時電力(理論電力値)は、4,000kwが必要な電力となり対稼動時との比率4.1%でこれを達成すれば年間8,485,920kwhの大きな、電力低減となる事が解った。この電力量は、田原工場の年間電力使用量の1.9%と大きな効果が得られる事も解り、ワーキンググループを作り低減対策を進める事とした。
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3. 活動の経過
(1)取り組み体制
   対策を進めるにあたり図4に示すように私たち工務部PEGの設備・省エネ担当スタッフ及び受変電設備運転・保全部署、各製造部スタッフからなるワーキンググループを設け対策を推進できる体制とした。
図4 推進体制

(2)目標の設定
   休日夜間の電力を、理論電力値まで低下させる。(理論電力値:非稼動時でも、保安用設備等の工場維持の為に最低限必要な電力)

(3)問題点とその検討
 今回の目的を達成する為の最も作業効率性の良い手法としては、電気の不要な消費は啓蒙による設備停止を行いつつ変電所等のロスの事も考えて変電所送りの元から切ることであるが、当工場の送電系統は常用系と自家発系に分かれ複雑な系統となっていることから、この常用系についてのみ休日夜間停止させるという方針で進めることにした。(図5参照)
図5 計画の概要図
 これを実施するにあたり発生すると思われる問題点を以下の3つの観点から分類し、一つ一つ整理する事とした。
<電力供給系統上課題>
1] 常用系電源の中に止められない設備(可燃性ガス排気設備、ガス検知器)が混在していないか?
防災&セキュリティ上の不安要素はないか?
<操業上の課題>
2] 操業開始時の運転準備入り操作時間が増え工数増加(=やりにくい作業)にならないか?
 (運転準備:起動操作の前に設備の制御系統を活かす操作。設備異常時や、非常停止時には運転準備の回路を落とす事により、設備を停止させるシステムとなっている)
<設備の信頼性上の課題>
3] 電源切り、入り操作により設備故障が増加する可能性があるか?
4] 遮断器の耐久性は問題ないか?
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4. 対策の内容と展開
(1)止められない設備の対策について<電力供給系統上の課題>
 実際の電気盤・制御盤の実態を試しに調べて見ると、止めれない保安用電源にも関わらず、常用系に接続されている物が発見された。そこで実際の制御盤を一つ一つ全て調査し、保安用設備の全てを非常用電源に区分けする事にした。具体的には、塗料調合室換気ファン・塗料循環ポンプ・ガス漏れ検出警報装置・設備火災警報装置などについてである。対象となった盤は工場総計で369盤にも及ぶ結果になった。 (図6参照)
 図6 対策内容概要図

(2)操業開始時の運転準備入り操作時間が増える事の対策<操業上の課題>
1] まず操業開始数時間前に前準備として(昇温等の条件出しとして)起動が必要なものには、その設備の制御用電源のみを自家発系に接続しておき(図7参照)、週初めの運転準備入り操作を不要とした。
2] その他の操業開始時に運転すればよい設備については、各工程の作業員が運転準備入り操作をすることに決め、操業停止時の停止操作も実施することにより省エネ活動の啓蒙につながると判断しお願い励行した。
図7 操作時間増防止対策

(3)電源切り、入り操作により設備故障が増加する可能性があるか<設備信頼性上の課題>
 今までの計画停電後の立上げ時、各工程でどのような不具合が発生しているか事前調査した結果、工場全体で数件の故障が発生していることが分った。内容は電子機器の電源基板の故障で、原因は基板上のコンデンサー劣化であることがわかった。このコンデンサーの一般的寿命は5〜7年で、使用環境(温度)でもかなり変動することが分った。この経験を生かし各工程の保全にお願いし、計画停電時に故障した電源基板と同仕様・同年代のものは、定期定量保全の考えに基づき、計画的に取替え又は予備品の確保を実施してもらうことにした。

(4)遮断器の耐久性は問題ないか<設備信頼性上の課題>
 変電所フィーダー遮断器の仕様を確認した結果、機械的寿命・電気的寿命とも10,000回
であり、今回の計画では年間約50〜100回の動作回数となる為約100〜200年の寿命と計算でき耐久性に問題ないことが確認できた。

(5)具体的な停止操作について。活動の展開
 前述(1)、(2)、(3)の問題点の対策が出来たショップより、各製造部の保全担当者と連絡を取り合い、少しづつ、トライしながら、毎週土曜日の夜間停止を開始することにした。
 これは、問題点の発生が何時生じるか明確化し、対策を適宜取る事を可能とし、非稼動時電力低減活動を着実に進める為である。
休日夜間停電手順(常用電力系統について、変電所側送りフィーダを断する事で進めた)
1] 土曜日17:00 停電予告放送(開始時刻、終了時刻等)
2] 同20:00 省エネ停電予告放送
3] 同21:50 省エネ停電放送
4] 同22:00 中央監視室より変電所の該当工場フィーダー遮断機を順次切り。都度確認
5] 日曜日5:50 送電予告放送
6] 同6:00 中央監視室より変電所の該当工場フィーダー遮断機を順次入り操作
上記進め方により予想通り不具合が発生し、次項に示すような対策を行なった。

(6)省エネ停電実施後の不具合と今後の計画
 実施後発生した不具合と対策は表2のような状況であるが、工場各製造部の協力を得ながら実施し生産に影響を与えるような大きな問題は全て解決を図り、休日非稼動時停電として継続実施中である。
 また、同様な手法で、工場全体での横展についても進める事で、計画を実施中である。
(表3参照)
表2 省エネ停電実施後の不具合と対策
表3 実施状況と今後の計画kw( )内は見込み
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5. 対策後の効果
   '04年現在の工場全体の休日電力消費状況を下記図8に示す。
図8 休日電力消費状況
   現状対策が57%完了時点で非稼動時電力比率で8.9%まで低下した。計画完了予定の'05年末には当初目標の5%を達成する事が確実と評価している。
 
6. その他の対策(受変電設備のロス低減)
 今まで各工程で実施してきた省エネ活動の成果により、工場サブ変台トランスのデマンドが低下している所があり、現在これらの寄せ止めを図9のような内容で推進中であり表4の効果を予想している。本対策により、前述の様に、現在の非稼動時電力の内訳で9%を占める、ロスの低減に繋がると考えている。
図9 変台トランス寄せ止め

表4 対策工程と予想効果
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7. まとめ
 今回休日の非稼動時電力低減ということで対策できたショップについては、目標の対稼動時間比電力量で5%を達成できた。その他の成果として平日の非稼動時電力についても39%から33%に削減できた。(図10参照)休日非稼動時電力低減活動が当初の見込通り平日稼動日夜間の非稼動時電力の低減に繋がったと判断、評価している。
図10
 
8. 今後の計画と後戻り対策
 今回実施した内容は使わないときは元から切るという最も基本的な内容であり、その為の阻害要因を整理対策すれば、最大の効果を得ながら、どこでも取り入れ可能な対策である。当工場ではこれを維持改善していく為の標準化事項として、
・ 新規導入設備への対応で非稼動時は元電源もない前提で設備計画
を実施し、本成果の後戻りがしない様、図って行きたいと考えている。
 最後に、今回の計画の副次効果として、工場内電力常用系統に混在していた保安用負荷について、商用系停電時に自家発電設備でバックアップされる非常用系へ整理、切替える事により、防災面での信頼性も向上している。昨今の各所での爆発・火災の事故の知見を生かし、少しでも、田原工場の防災信頼性が向上したと考えている。今後、省エネだけに止まらず、防災、品質まで幅広く考え、それらの活動とリンクした省エネ活動を展開して行きたいと考えている。
 
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