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1)現状の把握
伊那事業所は、水晶原石から機械加工やフォトリソ技術を用いて時計用の音叉型振動子やCPUのクロック源としての厚みすべり振動子等の振動片を加工している。
振動片には、電界をかけるための電極が必要であり、AuやAgの貴金属をスパッタリングや真空蒸着機等の真空装置を用いて成膜している。
組立工程においても周波数調整やパッケージングの封止工程に真空装置を使用しているなど工程全域で真空装置は随所に使用されている。
生産設備の電力使用量は図−2のように事業所全体の使用量の52%を占める。
まず、事業所内にある真空装置を全て拾い上げ消費電力を測定しマップを作成した。
真空装置に使用される真空ポンプの形式も油拡散真空ポンプからクライオポンプやターボ分子ポンプなど多種多様である。
その中で、油拡散真空ポンプを使用した真空装置の電力使用量をまとめてみると生産設備全体の使用量の7.3%、事業所全体の使用量の3.8%を占めることがわかった。 |
 図−2 事業所全体の電力使用量に対する生産設備の割合
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| 油拡散真空ポンプを使用した真空装置を機械別に分類してみると図−3のようになり、大半が周波数調整機とアニール炉で占められている。
今回は、この中でも最も小型の6インチ油拡散真空ポンプを使用している周波数調整機(Aタイプ)について改善の取組みをおこなうことにした。
Aタイプは真空チャンバーがガラスベルジャーから成るバッチ処理型の比較的コンパクトな装置であり、伊那事業所の他、マレーシアや中国の海外製造拠点などでも多数の装置が稼動しており、モデル装置として適当であると判断した。
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 図−3 油拡散真空ポンプを使用した真空装置
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| この蒸着式周波数調整機(以下DFm/cと略す)の消費電力は、蒸着プロセスを含めておよそ2kWhである。
DFm/cのユニット別に消費電力を調査した結果が図−4である。
蒸着自体の電力よりも、油拡散真空ポンプ(以下DPと略す)と油回転真空ポンプ(以下RPと略す)による消費電力の割合が大きく全体の約3/4を占める。
真空ポンプの消費電力の削減ができれば、周波数調整中のみならず待機時の電力削減に効果をあげることができる。
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 図−4 DFm/cのユニット別消費電力の割合 |
| 2)現状の分析 |
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DFm/cはRPとDPの組み合わせで大気圧から高真空までを排気しており、排気系は図−5のように構成されている。
約30リットルの真空チャンバーを大気圧から5〜10Pa前後までRPで粗引きし高真空側をDPで本引き排気する。
到達圧力は10−3〜10−4Paレベルである。
本引き中RPはDPの排気側の背圧を抑えるためにバックアップポンプとして作動している。
真空チャンバー内には抵抗加熱方式の蒸着源、デバイスがセットされたリングを順送りする搬送機構、周波数を測定するコンタクト機構、及び蒸着量を制御するシャッター等の周波数調整に必要な機構が組み込まれている。
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| 油回転真空ポンプにもいくつかの形式があるが、伊那事業所で使用しているものは回転翼型(ゲーテ型)であり、ポンプの構造を図−6に示す。
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| ローターについている2枚の翼板がモーター回転の遠心力によってシリンダーに押し付けられ翼板、ローター、シリンダーで囲まれた空間の容積変化により気体輸送をおこなうポンプである。
排気速度特性は吸入圧力の低下とともに排気速度は低下し、到達圧力に近づくにつれて排気速度はほとんどゼロになる。
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| 油拡散真空ポンプの構造を図−7に示す。油蒸気の噴流を利用して気体分子に運動量を与え排気口側に移送して排気する。
ヒーターにより蒸気を発生させるボイラー、蒸気を噴出するノズル及び噴射させた蒸気を凝縮させる水冷壁で構成される。
超音速で噴出した蒸気分子は、噴流方向の速度成分が極めて大きく、気体分子は噴流にはね飛ばされる。
各ノズル段と容器とのクリアランスは徐々に小さくしてあり、これにより圧縮作用が起こりポンプの働きをする。
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1)取組み体制
2000年度は生産設備の効率化を進める部門方針を受けて、生産設備の主管部門である生産技術部より4名のメンバーで編成し、真空ポンプの改善については1名の専任体制とした。
技術的なサポートを本社部門にもお願いし、まずは、試行錯誤で取組むことにした。
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2)目標の設定
対象真空装置について第1Stepの改善目標は、エネルギー削減率を現状の30%に設定した。
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3)問題点とその検討
3)‐1エネルギーロスの課題
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| (1) |
RPは最も負荷の大きい大気圧下からの排気を受け持っているが、数十秒で大半の大気を排気してしまう。
DFm/cにはモーター動力0.75kWのRPが採用されており、負荷により動力特性が変化するが4〜7×104Pa付近が最大所要動力となる。
しかし、この差は10%程度であり高負荷時もバックアップポンプとして作動しているときも同じ商用周波数で回転しており無駄があるため、負荷条件によって最適な周波数を設定できるようにすれば、消費電力が削減できると考えた。
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| (2) |
DPは1kWのヒーターを装備しており、現状は電力一定の連続通電であるが、使用する拡散油の蒸気圧特性、冷却水温や流量、及びヒーター取付け具合の違いにより加熱温度には最適条件があると考えられる。
また、ヒーターは大気中に露出しており放熱しているため、ヒーターの効率を向上させることが可能である。
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3)‐2省エネ改善上の真空ポンプの課題
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| (1) |
RPの回転数を下げた場合の、翼板とシリンダーのシール性、潤滑性、及びDPの排気側の背圧を保持する能力が確保できるか。
これについては排気量とチャンバー圧力のQ−P線図からある程度の想定は可能であり実機で確認する。
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| (2) |
DPのヒーター温度をどこまで下げられるか、その場合の排気速度と到達圧力はどのように変化(悪化)するのか。
拡散ポンプの投入パワーに対し、排気速度と到達圧力は最良値を有するが臨界背圧はパワーに比例する。最良値がどこにあるかは誤差要因が大きく算出しにくいため、これについても実機で調査する。
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1)DPヒーター部の断熱対策
ヒーターは電熱線を仕込んだアルミ鋳込み型のものであり、表面温度は400℃に達する。
外周が露出しているため、大気中に放熱しておりエネルギーロスになっているとともに空調機の熱負荷にもなっている。
まずは、この対策としてヒーター部を断熱することにした。
断熱材に要求される項目は、耐熱性、クリーンルームで使用するため低発塵性、及びポンプのメンテナンス時に容易に取り外しができることである。
ガラスクロスをフッ素コートガラスクロス生地で内包した断熱材をヒーターに合わせて縫製しマジックテープで脱着できるようにした。
これにより要求項目を満足し電力削減効果も図−8に示すように、ヒーター温度に関係なく約8%の改善が可能になった。
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図−8 油拡散真空ポンプの断熱と電力量

図−9 油回転真空ポンプの回転数と電力量

図−10 油拡散真空ポンプヒーター温度と圧力

図−11 油拡散真空ポンプヒーター温度と電力量
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2)RPのインバーター制御
前述のようにRPは負荷に応じてモーターの回転数を制御する必要があり、モーターは6極インダクション方式のため、インバーター(以下INVと略す)を採用することにした。
粗引き時は60Hzで動作し高真空側になったところで適当な周波数に下げるという考えである。
インバーターでRPの回転を変えた場合のRP単体の電力量を図−9に示す。
60Hzに対して40Hzで69%、30Hzで55%まで消費電力(RP単体)を抑えることができる。
本引き状態において、周波数を30Hzまで落としても到達圧力は変化せず、バックアップポンプとしての機能は損なわれない。
RPとDPのQ−P線図を見る限り30HzでバックアップしてもDPの臨界背圧を超えることはないが、シール性等のメカニカルな限界周波数が不明確なため第1段階としては40Hzが適当と考える。
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3)DPの温度制御
DPの個体差に応じた熱量の供給方法は、ヒーターのon/off制御、または、PDI制御が考えられるが、温度設定が容易にできるPDI制御回路を組み込み真空の評価をおこなった。
ヒーター温度(相対比較)と圧力の時間変化を図−10に示す。
加熱温度を下げることにより真空引き能力が悪くなると予想していたが、今回の実験では図のように真空引き時間、到達圧力ともに向上した。
油蒸気の噴出量は投入パワー(拡散油に伝達された熱量)と単位質量当たりの蒸発量に比例しポンプ作用となる成分が増加するが、温度上昇はチャンバー内への拡散も増えると考えられる。
これにより、使用する拡散油の蒸気圧や熱の伝達具合により最適な加熱条件がある。
ヒーター温度を変えた場合(RPの電力量含む)の電力量を図−11に示す。
ヒーター温度の減少に伴って消費電力を抑えることができる。
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4)真空ポンプの動作シーケンス
RPは排気の負荷に応じて回転数を制御する必要がるため、図−12のようなタイミングチャートで作動するよう改善した。
RV(粗引き弁)が開くとRPは60Hzで回転し粗引きを行なう。
所定の圧力に達しMV(本引き弁)に切替わり高真空センサーがonしたところで40Hzに回転を下げる。
改造が簡単に済むように高真空センサーの出力接点を直接INVの入力信号に入れて回転数が切替わるようにした。
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